読んだ本の数:18冊
読んだページ数:5190ページ ナイス数:576ナイス ![]() 後輩所有。「エンジェルさん」(要するに狐狗狸さん)の話と、「猿の手」の話。「猿の手」の後味の悪さが凄いなー、好きだけどね、こういう展開。無根拠な自信って怖い。どちらも、結局“人間が一番面倒”ってことかも。ラストのおでん屋さんの狐の子が可愛い。 読了日:11月7日 著者:CLAMP ![]() 坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲームの中ではカラテ使い・テツオとなる。『ゼロ年代SF傑作選』収録の後日譚短編既読(なので少々ネタバレ済み)で読んだが、SFというか、ごく普通に大学生の青春小説だよね。微妙に恋愛。ゲームも内容が架空なだけで、2005年当時の技術でも実現可能そうだし。でも好き。大多数の他人からは無意味に見えても、自身にとって意味がある対象に打ち込むことができ、それを共有できる相手がいるのは羨ましい。これはテツオ=悦郎の物語だが、ジャックやパクにも、そこで戦わなければならない意味があるのだろう。 読了日:11月7日 著者:桜坂洋 ![]() 再読、星虫シリーズ1。宇宙飛行士(スペースシャトルパイロット)を目指す女子高生・氷室友美は、普段は猫を被り、才色兼備の優等生を演じている。友美を含む全世界50億人の額に、謎の宇宙生物“星虫”が吸着するが。七日間の物語。一日毎に“星虫”に対して掌を返す大衆。分かり易い馬鹿な悪役としての日米両政府の描き方は若干疑問だが、夢を追い求める素晴らしさと、生半可な覚悟では叶わないという事実を突き付ける良作ジュヴナイルSF。友美ほどの信念、どれだけの人間が持っているだろう? 30代で読んでも、見習わねばならないと思う。 読了日:11月9日 著者:岩本隆雄 ![]() 再読、星虫シリーズ2。女子高生の川崎純らは、鵺姫伝説真っ只中の戦国時代へ迷い込む。現代へ戻る手段はあるのか、伝説の真実は。何者が時の門を作ったか推理する辺りはミステリのよう。最後は時間パズルが怒涛の勢いで完成し、頭から読み返して細部を確認すると感嘆。地球や人類のためというデカい話が多いシリーズ中、生き延びる・現代に戻る・目の前の人を救うことに集中しているのが良い。まあ、天才で文武両道の純でなければ、戦国であっさり死ぬと思うが。あと、最後にサラリとスターバースト云々と記述する作者様も大好きだ。一番好きな巻。 読了日:11月10日 著者:岩本隆雄 ![]() 再読、星虫シリーズ3。天涯孤独な青年・宮脇年輝は、天邪鬼伝説のある山で怪現象に遭遇し、小鬼と共同生活する破目に。迷惑極まりないのに、無茶苦茶可愛い。友人の亨や純(『鵺姫真話』川崎純)も交えた回収所での日々は、合宿みたいで凄く楽しそう。この妖怪譚がどうシリーズに繋がるのかと思ったら、こう来たか! 初読で理解した瞬間はゾクゾクした。この話、年輝と天邪鬼を裂こうとする和美という、魅力的な悪役がいるから面白いんだと思う。本書と『真話』は補完し合うので、どちらを先に読んでも、もう1冊読了後に再読したら新発見できる。 読了日:11月11日 著者:岩本隆雄 ![]() 再読、星虫シリーズ4、完結。星虫事件3年後、パトロール隊員の田中隆は、戦国時代に呼び寄せられて瀕死の鬼と出会い、協力することに。『星虫』で脇役だった隆が主人公、行先は『鵺姫真話』3年後。天才ばかり登場するシリーズで、頭脳派ではないお調子者の隆の活躍は読んでいて楽しい。ただ、“どう転んでも地球は滅ぶけれど、全宇宙を助けてくれ”と言われてもピンとこないし、設定がデカくなり過ぎてSFよりむしろファンタジー。前3作が★5つなら本書は4つで個人的に若干低評価だが、ラスト一行でシリーズ全ての時の輪が閉じる構成は見事。 読了日:11月12日 著者:岩本隆雄 ![]() 再読。日下部稜子の姉が首吊り自殺した半月後。“黒服”が空目恭一の前に、首吊りの幻影に怯える少女・大迫歩由実を連れてくる。図書館の禁帯出の本と、首吊りにどんな関係が? 上下巻の上なので、情報を揃える感じで事態はあまり動かないが、間章は衝撃的。本書を読むまで『奈良梨取り』という昔話を知らず、以降も他で遭遇しないが、こういう民俗学的分析は面白くて好き。前巻で酷い目に遭った亜紀が、元通り復活していて嬉しい。稜子は羽間を〈子供の町〉と評したが、著者の他作品と比べると確かに、基本、子供しか出ないシリーズだよねと思う。 読了日:11月13日 著者:甲田学人 ![]() 再読。三人兄弟が梨を取りに行き、成功するのは末子のみ――作家・大迫栄一郎の著作『奈良梨取考』の真相と、図書館の本に纏わる怪談。空目恭一の謎解きにより、昔話と首吊りが魔術として繋がる過程はゾクゾクする。クライマックスの章題が「収穫祭」ってのが凄い。感染条件が非常に明確な分、読んでいる自分の身に“怪異”が及びそうな怖さはあまりない。稜子と武巳の関係が変化していく心理描写が、3巻4巻の見所と思う。この結末は、武巳の立場としては複雑だよなぁ。ところで稜子の姉は、単に本の管理ミスによる巻き込まれ? だとしたら悲惨。 読了日:11月14日 著者:甲田学人 ![]() 再読。コックリさんの亜種“そうじさま”の儀式を行った翌日、主催者の少女が目隠し姿で自殺した。近藤武巳ら儀式参加者の周囲にも、目隠しをした少年の影が見え隠れして……。武巳メインだが、1巻以来の空目恭一の過去に焦点が当たる重要な巻。“魔女”も本格始動。とはいえ、個人的には3-4巻と6-7巻に挟まれて影が薄い。コックリさんが無意識の筋肉運動なのは知っていたが、『降霊術』ではなく『召喚魔術』に持っていく解釈が凄い。狂的に蒼い子供部屋は、ありありと脳内にイメージできる。少し『断章のグリム』なでしこ上巻ラストを連想。 読了日:11月14日 著者:甲田学人 ![]() 再読。文化祭。美術部の八純啓が描いた連作には、空目たちが今まで遭遇した“怪異”が描かれていた。シリーズ一嫌いな水内範子登場、故に一番印象深い上下巻。自分の八純への恋愛感情を錦の御旗に、「先輩のため」と言って相手の望まぬことを押し付ける傲慢。彼なりに異能力と共存していたのに、本当に惜しい。ところで、ずっと正常だったのに突然片方の視力を失ったショックは大きかろうとは思うが、元々片目弱視の身としては、片目で見る世界の扁平さをあまりにしつこく強調されると若干凹む。村神俊也が文芸部会誌に載せた小説が非常に読みたい。 読了日:11月15日 著者:甲田学人 ![]() 再読。八純啓の死。水内範子の暴走。学校全体に隠し通せないところまで、“怪異”は広がってしまう。空目は事態を鎮静化できるのか。範子の目はシリーズ屈指の痛い場面。自分勝手に被害者面する範子は何度読んでも嫌いだが、彼女の行為は誰を救いも滅ぼしもせず(被害者が結局アレだから)完全に無意味だったと思うと、哀れではある。美術部は受難過ぎるが、全員ずっとあの鏡の身近に晒されていたから仕方ないのかな。ところで、八純の絵を撤去して再掲示したのは、物理的に肉体がある者の仕業だと思うが、“偽物”の犯行と解釈して良いのだろうか。 読了日:11月15日 著者:甲田学人 ![]() 再読。空目恭一たちは、“魔女”と敵対することを決意する。羽間の伝承と学校の秘密。七不思議の最後の物語と“魔女”の目的。三つ巴、四つ巴で交錯する思惑。村神俊也の家が神社って、良い設定だ。前巻の心理的打撃を引きずる俊也。亜紀が空目を好きなのは百も承知で、それでも私、俊也と亜紀がお似合いだと思うんだよな。二人とも、空目が一番大事。無差別被害を防ごうとする辺り、基本的に空目は、判断基準が独特なだけで他者に優しいよね。だが、“判断基準が独特なだけで他者に優しい”という表現は、“魔女”にもそのまま当てはまるのが困る。 読了日:11月16日 著者:甲田学人 ![]() 再読。“魔女”が帰還した学校。空目たちに、怪現象に悩まされる木村圭子に関する相談が持ち込まれる。彼女が行った〈儀式〉は、とある昔話を思わせるもので……。ズレていく、武巳と空目たち。最近、存在感の薄かった“黒服”が若干登場。圭子にとって、同じ美術部でルームメイトの水内範子は掛け替えのない友人だったが、6-7巻時の範子には、圭子の姿など視界にも入っていなかったろう。一方的な依存。座敷童は触りだけ一応知っていたが、類型の『ウントク・ヒョウトク譚』やら『竜宮童子』は初耳。上中下巻の上、話は長いが1冊の厚さは薄い。 読了日:11月16日 著者:甲田学人 ![]() 再読。上中下の中。『座敷童』とは、決して富貴ばかりをもたらす妖怪ではない。水面下で続く“怪異”。“魔女”とその弟子の宣戦布告に動揺する文芸部。そして、決定的な亀裂。武巳が、5巻からの隠し事をさっさと皆に打ち明けていれば、こんな結果には繋がらなかった筈だ。しかし現時点において、他の全てを切り捨てても自分の大切なものを守る、と覚悟を決めたのは納得できる。亜紀と俊也は空目が一番大事で、でも武巳の一番は違った、だから仕方ない。そして多分、空目は、文芸部の仲間は誰も同じくらいに大事で、自分のことが一番大事じゃない。 読了日:11月16日 著者:甲田学人 ![]() 再読。上中下の下。木村圭子の件に関しては、無事とは言い難いものの一つの区切りがついたが、『竜宮童子』を元にした〈儀式〉を巡る事件は終わらない。武巳の周辺で起きる異変。友人が狂う場面を目の当たりにするのは辛いよなぁ。これで美術部全滅か……。亜紀が“占い師”と対話する場面が好き。ずっと不安定だった俊也も、“夜会”に巻き込まれて強制的に復活。羽間の『座敷童』の意味が解って、空目の解説により1巻からの全てが繋がった瞬間は、爽快ですらある。明かされた“魔女”の目的。伏線用意周到過ぎ。何か、稜子はもう大丈夫そうだな。 読了日:11月16日 著者:甲田学人 ![]() 再読。最後の物語の始まり。なのだが、初読時の個人的事情(山奥で電波を受信する勉強中)故に、冒頭の携帯電話の怪談を読むと笑えて仕方がない……。“魔女”十叶詠子、そういう風に生まれついたのは本人の責任ではないので、彼女と両親との間でさえ齟齬が生じるのは可哀想ではある。しかし、詠子の目的は、人界に害をなす。空目は阻止できるか。前巻で俊也復活と思ったが、復活を通り越して違う境地に到達してしまった。稜子も強くなった。置いていかれた気分になる亜紀。でも私は、理性で自分の感情の全てを押し殺して行動できる亜紀が大好きだ。 読了日:11月17日 著者:甲田学人 ![]() 再読、完結。私は初巻刊行月から追っていたが、もし不評で2巻以降が出ず初巻で終わっていたら、「空目たち文芸部の5人もあやめも、みな幸せに末永く暮らしました」と信じていられたのではないか。読者が続きを望んだばかりに、彼らを不幸にしたのではないか、とよく考える。小崎摩津方、利用される側は堪ったもんじゃないし所業も許されないけれど、彼自身の揺るぎ無い生き方は格好いい。亜紀は、不本意だろうが一応自分で決断した結果だから、それなりに事件を消化できると思う。武巳や稜子は、消化できないだろうなぁ。そして、都市伝説は続く。 読了日:11月17日 著者:甲田学人 ![]() 現世まきみき可愛い。少女お香さん可愛い。座敷童子ズ可愛い。扉絵と巻末の現世服童子ズ超可愛い。縁結び回の扉絵もみんな可愛い。女性キャラ可愛すぎの巻。「それ『今風』とは言わない」と言える童子ズの判断力ナイスだ。「現世朝ニュースの安心イケメンアナウンサー風で!!!」と「暇な神々の余興」がもう(笑)。鬼灯様の「何より不愉快」の理由は深い。“素晴らしき阿呆”の出番が少なくて残念だが、引っ越し騒ぎの件はしっかり恨んでいるらしい。短髪鬼灯様は、完全現世仕様より、角で前髪が分かれているほうが好み。扉絵は虫回が一番好きだ。 読了日:11月23日 著者:江口夏実 読書メーター PR |
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