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【感想】キッチン
キッチン  吉本ばなな『キッチン』(福武書店)。『キッチン』『満月-キッチン2』『ムーンライト・シャドウ』の3篇を収録。20代半ばの院生時代に観測所本棚で読んだが、今回、職場本棚で再読した。
 これ、通常は“恋愛小説”に分類されるのだろうか? でも、主題は“恋愛”ではなくて、“大切な人との別離の克服”だよね。
 個人的には、長野まゆみの初期作品(『少年アリス』等)と同系統だと思う。美しく磨き抜かれた文章と、現実感のない世界。もちろん長野作品に比べれば、我々が住む現実によく似ているけれど、わずかに位相が異なる平行世界のような。
 ファンタジー、と自分の中で位置づけると、非常に納得できた。

 以下ネタバレ注意。

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【2012/02/02 01:19 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
【感想】異形の者
ひかりごけ 武田泰淳『異形の者』(新潮文庫『ひかりごけ』収録)は、僧侶の資格を取るべく加行道場に籠もる修行僧の物語。自身、僧侶でもある著者の経験も反映されているのだろう。
 が。私が一番好きなのは、本題に入る前の、哲学者と、かつて“極楽の専門家”だった“私”の問答場面。「僕は地獄へ陥ちるんですよ」と勝ち誇ったように言う哲学者に、“私”は「人間はみんな極楽へ行くときまってるんですから」と言い返す。“極楽というブワブワした軟体動物”に、沈黙する哲学者。

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【2006/06/05 21:00 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
【感想】海肌の匂い
ひかりごけ  武田泰淳『流人島にて』(感想)(新潮文庫『ひかりごけ』収録)のQ島の住民は、本土から見れば異端だろうが、土着ではない流人の“私”や大嶽は、島の中で更に異端だった。『異形の者』(感想)の僧侶たちは、世俗の中で異端。『ひかりごけ』の人肉を食べてしまった船長は、人間社会の中で異端として扱われる。
 『海肌の匂い』では、沼津の町中から漁村のS部落に嫁いで間もない若い妻・市子が、異端である。S部落の“けだるいようなヌルリとしたおだやかさ”が、形のない不安となって市子を圧迫する。

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【2006/05/23 21:00 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
【感想】流人島にて
ひかりごけ  武田泰淳『ひかりごけ』(新潮文庫)。『流人島にて』『異形の者』(感想)『海肌の匂い』(感想)『ひかりごけ』の4編が収録されている。『ひかりごけ』目当てで買ったのだが、『流人島にて』が一番好き。
 作中のH島、Q島は、八丈島と八丈小島のこと。江戸時代に罪人が流された島だ。

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【2006/05/19 21:00 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
【感想】世界の中心で、愛をさけぶ
世界の中心で、愛をさけぶ 片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』(小学館)。この本を読んで「感動した」という方は、以下ご注意。

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【2004/10/20 21:00 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
【感想】世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド  村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(新潮文庫)。

 昇っているのか下っているのか。そもそもこれは本当に動いているのか。そんなことを考え出すほど長いエレベーターを降りた「私」は、ピンクのスーツの似合う太った美しい無音で喋る娘に案内されて、雨合羽を着込み、暗いトンネルの向こうの依頼人のもとへと歩いて行く……(ハードボイルド・ワンダーランド)。
 一方「僕」が迷い込んだのは、周囲を高い壁に囲まれた、一角獣の住む影のない街だった……(世界の終り)。
 交互に訪れる二つの物語が、「私」が「組織」と「工場」の対立に巻き込まれるにつれて――。

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【2001/02/21 21:00 】 | 感想日本文学 | コメント(0)
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