読んだ本の数:24冊
読んだページ数:6340ページ ナイス数:268ナイス ![]() 記憶喪失の青年クウガが目覚めたのは、流浪者(ドリフター)の少女スズと機械人形(オートマタ)のエアが、超高高度の空を旅するゴンドラの中。旧文明の遺産である、雲を貫く巨大な柱を中心とした世界。柱に住む人々も、柱と柱の間に渡した鋼線をゴンドラで旅する流浪者も、大地を見たことがない。世界設定に惹かれて買ったが……読後のコレジャナイ感(汗)。クウガの戻った記憶もそんなに重要じゃなかった気がするし、スズの動機も共感しづらい。エアが可愛くて世界観は素晴らしいので、痛快冒険活劇にしてほしかったわー。何かいろいろ勿体ない。 読了日:7月3日 著者:石川湊 ![]() 再読、職場本棚。内容が多岐に渡るので、時間がかかると初期に読んだ内容を忘れる(汗)。農民、修道院、大学人などの生活も興味深いが、一番好きなのは「攻撃と防禦の構造」の章。城塞としての教会建築。外敵に対しての防禦と同時に、都市内部に対しても防禦。ロデーズやカルカッソンヌの城壁と塔だらけの地図見るとワクワク。「エピローグ――パリ一市民の日記」、ジャンヌ・ダルクのパリ攻撃を内部で体験して日記に遺した人物だが、ひたすら物の値段を記録しているほうが面白い。「市民の一日、農民の一年」パンや肉の消費量など食糧事情に関心。 読了日:7月4日 著者:木村尚三郎,堀越孝一,渡辺昌美 ![]() 〈クロノス・ジョウンター〉で過去に行ったものは、滞在時間は短く、出発日時には戻れず未来へ跳ばされてしまう。それぞれの時間移動を巡る7篇。C・Jやその姉妹機の動作の法則とそれによる制限は魅力的だし、各話の絡みは読了後に年表作りたくなる(注:もともと付いてる)くらい面白い。が、話そのものには感動できない(汗)。多分、私が基本的に歴史改変できない時間物が好みなのと、恋愛物苦手なせい。著者の『黄泉がえり』もそうだったが、アイデア面白いのに話は私のツボとズレるんだ……。「吹原和彦」が一番良かった。次は「野方耕市」。 読了日:7月4日 著者:梶尾真治 ![]() 再読。魔女と聖女という両極端の(多分に男性から見た)女性像を取り上げて、その狭間の、世俗の普通の女性を描く。という本だと思う。中世末に活版印刷が発明され、悪魔学の書物がベストセラーとなり画一的な“魔女”のイメージが普及したことで、ヨーロッパ中に魔女狩りの嵐が吹き荒れた。女性は通常の聖職につけないので、教会抜きで個人的に神と合一化する聖女になる。処女である聖母マリア、悪の根源イヴ。罪から悔悛するマグダラのマリアが、女性一般の宗教的モデル。個々の話はそれなりに興味深いのだが、最後まで読んでも脳内バラバラ……。 読了日:7月7日 著者:池上俊一 ![]() 再読。初読時は「敦煌文献」自体を知らず、話がどう進むのか全くわからなかった。宋の時代。科挙を受けるため都に来た超行徳は、市場で西夏族の女と文字に出会ったことから、何かに導かれるように西夏へと旅立つ。冒頭数頁は辛かったが、市場以降はあれよあれよと展開して面白い。砂漠の中で孤立した漢民族の都市国家・沙州(後年、敦煌に名前が変わる)が滅亡に瀕した際の、青年僧の台詞には私も痺れた。「自分たちの読んだ経巻の数は知れたものだ。読まないものがいっぱいある。まだ開けてさえ見ない経巻は無数にある。――俺たちは読みたいのだ」 読了日:7月11日 著者:井上靖 ![]() 再読。同著者の『フランス史』から、ジャンヌ・ダルク関連部分のみを独立させた本。というわけで、ジャンヌ出現に至るまでの歴史に関しては、先に訳者あとがきを読んだ方が良い。ジャンヌが聖女と認められる(1920年)前の本なので、身を賭してフランスを救ったのに十分に敬われていない、という悲劇的な色合いが濃い気がする。1冊の半分弱は原注・訳注。非常に注が詳細だが、要するに、本文だけ読んでも理解できない……。当時、教皇庁が分裂して仏アヴィニョンと伊ローマに教皇が二人いた件は、他書で説明を読んだ記憶がないので有難かった。 読了日:7月13日 著者:ジュールミシュレ ![]() 後輩所有。田舎町の駄菓子屋の息子、鹿田ココノツは漫画家になりたい15歳。父と、謎の美少女・枝垂ほたるが、彼に店を継がせようとするのを必死に拒否するが……実は適性バリバリ。駄菓子屋で売っている物を各話1つずつ取り上げる漫画だが、話のテンションがおかしい(笑)。ほたるさん、社長令嬢なのに残念な美人で素敵。ココノツの同級生の遠藤兄妹(双子)のサヤちゃん可愛い。ココノツと遠藤兄の豆が、15歳らしく健全に、ほたるさんの水着やパンチラや胸に惑わされているのがとても良い(笑)。ほたるさん本人は、威力に無自覚なんだけど。 読了日:7月13日 著者:コトヤマ ![]() 後輩所有。鹿田ココノツ(15)の夏休みは続く。1巻では勝手に中3の夏だと思っていたが、豆がバイク買ってるし、中3なら受験勉強もするだろうし、高1? 主人公はココノツなのに、各話扉絵は概ね、ほたるさんのセクシーショット。時々サヤちゃん。パジャマでラジオ体操するほたるさん超可愛い。ほたるさん家に招かれて、やましい心に悶えるココノツも良い。だが今巻のハイライトは、「サヤちゃんは、脚…かな。」だと思う(笑)。あとがき読むまで気付かなかったが、各話8頁。あまりのテンションに、8頁とは思えない「読んだ!」感があるね。 読了日:7月14日 著者:コトヤマ ![]() 再読。「聖書」と聞くと宗教の経典だが、ある民族の神話・歴史と思えば、壮大で波乱万丈な物語でめちゃくちゃ面白い。新約篇も読んだが、私は旧約が好き。初読時、いきなりアブラハムが登場したので(旧約って『光あれ』から始まるよね?)と疑問に思ったが、読み進めて『光あれ』が出てきた場面では「こう来たか!」と盛り上がった。サウル、ダビデ。神に選ばれて王となったのに、一生涯、名君であることは難しいのか。神自身が、ある男に浮気した妻を許すよう言うが、何度も何度も約束を破る民を罰しては許し、呼びかける神が気の毒に見えてくる。 読了日:7月18日 著者:ウォルター・ワンゲリン,仲村明子,WalterWangerin ![]() 再読。教科書でお馴染み『山月記』と、『名人伝』『弟子』『李陵』収録。孔子の門人・子路を描いた『弟子』は漢文のままの台詞(『論語』の引用?)が多く、読み進めるの苦労した。弓の名人・紀昌を描く『名人伝』、短いけれど凄く面白い。『李陵』は四篇で一番長いが、読み始めると一気。漢の時代、匈奴と戦って捕虜になった李陵と、李陵を庇って処罰されるも、『史記』を書き上げる司馬遷。『山月記』の李徴は虎になっても、自分の詩を他人に評価されたいが、司馬遷は、他人に評価されようとされまいと、自分が書かずにいられないのだろうと思う。 読了日:7月19日 著者:中島敦 ![]() 再読。原書1冊を旧約・新約に分割。イエス生誕の少し前〜死の少し後までを描くが、イエスの物語と言うより、イエスの周囲の人間関係のドラマだと思う。ユダが裏切った理由が面白い(本人は“裏切った”つもりなさそう)。シモンら弟子のキャラが立っていてその後が気になるので、『使徒行伝』も読みたい(ほぼ全員、殉教したそうだが……)。私は単に物語として読んでいるが、これが自分たちの歴史であると信じている人々にとっては、そりゃ特定の土地に物凄く拘るわ、ということだけはよく分かる。〈裁いてはならない。自分が裁かれないためだ。〉 読了日:7月20日 著者:ウォルター・ワンゲリン,仲村明子,WalterWangerin ![]() 再読。ジュヴナイルSF。私は成人後に出会ったが、小中学生が図書館で見つけて読んだらめちゃくちゃ面白いに違いない。どこにもあらすじ書いていないので、表紙絵と題だけでピピッとこないといけないが。文夫と山波先生(大学の物理学の助教授)は、浅間山登山中、謎の飛行物体に捕まってしまった。ソレマン人の目的は。彼らに何をさせようというのか。宇宙空間、他の惑星、深海、地底、さまざまな舞台を大冒険。空間艇を襲う敵の正体にはおおっと思うし、本編終了後の文夫と先生を待っているであろうセンセーションを想像すると読後に盛り上がる。 読了日:7月21日 著者:石川英輔 ![]() 再読。〈ジャンヌ私生児説〉(ジャンヌが農民の娘ではなく、王室の血を引く王女とする説)を強い調子で否定する以外は、「信頼できる資料にあることしか信じない、書かない」という著者の信念通り淡々と歴史的事実を綴る、薄くて読み易い本。この時代は血縁関係が難しく、ミシュレのジャンヌ本を読んでいた際「仏王家だけでなく、英国も系図くれ!」と思っていたので、巻末の「英仏王家略系図」は非常に有難い。出身地ドンレミから王太子のいるシノンへ旅する途中、ジアンを通過後、オルレアンに〈乙女〉の噂が伝わり始めたのは、位置関係見て納得。 読了日:7月22日 著者:レジーヌペルヌー ![]() 一章で一家の歴史、二章と三章でシャーロット、エミリーの作品分析。私はエミリー死後のブロンテ家は何も知らなかったので、興味深かった。ブロンテ姓は父が名乗り始め、子が全て夭折し、父の死により絶える。シャーロット作品は『ジェイン・エア』のみ既読。全作品を取り上げるが、私はネタバレ気にしないので未読作品の解説も読む。自分の経験が直接作品に反映されるタイプらしい。エミリーは『詩集』『嵐が丘』とも既読。「ゴンダル年代記」のあらすじ有難う! ゴンダルも嵐が丘も、他人に迷惑なくらい、奔放で自分の欲望に忠実。それが魅力的。 読了日:7月24日 著者:野中涼 ![]() 再読。『風と共に去りぬ』の映画は見たが原作未読。15歳のマーガレットがノートに手書きし、結ばれることのなかった求婚者ヘンリー・ラブ・エンジェルに贈られ、双方の死後にヘンリーの遺品から発見された小説。南洋に沈んだ火山島レイセンと、誇り高い女性コートニー・ロス、叶わぬ愛の物語。15歳でこれ書いたのか(汗)。後半は、ノートとともに発見された写真、マーガレットからの手紙などで綴られる二人の半生。これ読むと、『風と~』のスカーレット・オハラってマーガレット本人なんだなぁ、と思う。最後の、謎めいた手紙は忘れられない。 読了日:7月24日 著者:マーガレット・ミッチェル,デブラ・フリアー,MargaretMitchell ![]() 再読。児童書SF。野生動物がほぼ絶滅した近未来。過剰な人口の大部分は摩天楼に引きこもり、立体テレビに囲まれて無気力に暮らす。事故に遭った十三歳のエヴァが数か月の昏睡から目覚めたとき、彼女の意識は別の身体に移植されていた……。移植先が衝撃的だが、エヴァ本人は比較的冷静に、身体の主の記憶の残滓と折り合いをつけて、新たな生き方を手に入れていく。特殊な生い立ちのエヴァだけができることかもしれないが。大手テレビ制作会社が事実上の支配者のように最期の徒花を咲かせているが、人類は黄昏に向かう。イヴからの未来への贈り物。 読了日:7月25日 著者:ピーターディッキンソン ![]() 再読。ローワン2作目。1巻の半年後、春。リンの村を〈旅の人〉が訪れた。〈旅の人〉は、黄金の谷の伝説など面白い話を聞かせてくれるが、疎む者も多い。同じ頃、村の魔女シバが何か恐ろしいことを予知し、謎の詞をローワンに伝える。村を襲う危機、募る疑心暗鬼。大昔の伝説が、現在にどう繋がるのか。定住民から移動民への偏見とか、リンと〈旅の人〉の混血であるアランへの村民の警戒視とか、嫌な人間関係が本当にリアル。中途半端な予言が話をややこしくしている気がするが、最後の解決もシバのおかげだもんな。改めて読むと伏線が素晴らしい。 読了日:7月25日 著者:エミリーロッダ ![]() 再読。ローワン3作目。海辺のマリスの民から使者が来て、ローワンと母ジラーは海辺へ赴くことになる。1作ずつ、舞台が広がっていく感じがいいね。リンとマリスは、かつて共に外敵ゼバックと戦った仲間。マリスの指導者〈水晶の司〉の交代時期が近づくが、後継を狙って対立する三氏族の、時には暗殺も厭わない権謀術数っぷりがえげつない。凄い児童書ファンタジーだな……。誰を信頼してよいかわからない状況で、それでも彼らの力を借りて、ローワンは初代〈水晶の司〉の遺した詩の謎を解かねばならない。最後の最後のどんでん返しはハラハラする。 読了日:7月25日 著者:エミリーロッダ ![]() 再読。友人の女性トラブルに関係して人を殺したムルソーは、母の死に泣かなかったという理由で糾弾され、死刑判決を受ける。裁判シーン、誰も殺人被害者のことは気にしていないのが凄いな。母の葬式と事件に何の関係があるのか。裏表紙では〈通常の論理的な一貫性が失われている男〉と説明されるが、本人の態度は、他人と多少異なるとはいえ非常に一貫していると思う。嘘はつかない。それが、彼を理解できない他人を苛立たせる。再読で気付いたが、裁判の証言に立つ直接の知人たちからは、好かれているのにね。第二部ラスト、叫んでくれて良かった。 読了日:7月26日 著者:カミュ ![]() 再読。ローワン4作目。さらわれた妹の救出のため、ローワンら〈五本の奇妙な指〉は、海の向こうのゼバックの地へと旅立つ。春にバクシャーの仔が生まれているので、2の翌年? 300年状況が動かなかったのに大事件が続き過ぎだが、1と2、3と4はセットと思えば、偶然1と3の時期が被っただけかも。1で役立たず扱いだった少年が、何度も村の危機を救ったら、恐れられるようになったのは気の毒。普通に、村の一員として認めて貰いたいだけなのに。親友は着実に増えているが。3は孤独な戦いだったが、今回は信頼できる仲間と一緒なのが救い。 読了日:7月26日 著者:エミリーロッダ ![]() 再読。ローワン5作目。4から一年以上経ち、暦の上では春なのに終わらない冬。食糧が尽き、リンの村民の大半は避難した。バクシャーとともに村に残ったローワンは、白い魔物に遭遇。再び〈禁じられた山〉に挑んだローワンは、歴史の真実を得る。毎回、自然のシステムの循環みたいなのが凄い。常々「シバは謎めいた詩ではなくハッキリ予言してくれればいいのに」と思っていたが、これはもう、そういう形でしか出来ない能力だな。既刊最終巻だが、オグデンが他にもいろいろ知っていそうで、まだ明かされていない設定があるのでは? 続巻出てほしい。 読了日:7月26日 著者:エミリーロッダ ![]() 再読。ペルヌー本の淡々っぷりに比べると、少々演出を感じる(内容は事実だが、ルーアンでの死から始まりジャンヌ誕生に戻る、みたいな並べ方で)。ジャンヌを詠った詩の引用が多いのも、演劇っぽく感じる一因? 仏騎馬隊が英の長弓隊により壊滅→長篠の戦い、ローマ法王庁分裂→南北朝時代などの例えや、仏人著者だと自覚し辛そうな“フランスならではの特徴”の説明が、日本人には有難い。英仏両方キリスト教国なのに、なぜ神がフランスに味方するとジャンヌは考えたか。シャルルマーニュ以来、フランスは「ローマ法王の長子」であるという感覚。 読了日:7月30日 著者:村松剛 ![]() 大好きな佐藤弓生さんの第四歌集。「人はすぐいなくなるから 話してよ 見たことのない海のはなしを」がとても好き。今回は「ふれたならそれはみな星 こえ こころ ことばはやがて腐敗する星」「老少女老少年の声はるか赤色巨星から落ち葉ふる」「底なしの思ひ出、女、スカアトのなかのつめたき渦巻銀河」「(スヰングバイ)(スヰングバイ)と水夫のこゑ (さらば金星)(さらば人生)」「言語野はいかなる原野 まなうらのしずくを月、と誰かがよんだ」「月は死の栓だったのだ抜かれたらもういくらでも歌がうたえる」など宇宙関係の歌が素敵。 読了日:7月31日 著者:佐藤弓生 ![]() 再読。小6の夏休み。ぼく(木山)、河辺、山下は「死んだ人が見たい」と、一人暮らしのおじいさんが死なないか見張ることにする。無気力なおじいさんが、見張られていると知るとやたら元気になり、案外性格悪いのが良い(笑)。河辺や山下も、洗濯物干しが上手だったり包丁砥げたり、友人の知らなかった一面が見えてくる。ちょっとヘンな河辺は、背景がわかると愛おしくなってくる。山下は若干どん臭いけれど、実は一番大人かもしれない。ラストの台詞は凄い。一浪中の夏に書店で買い、号泣した本。あのとき本書を選んだ自分のアンテナは褒めたい。 読了日:7月31日 著者:湯本香樹実 読書メーター PR |
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