読んだ本の数:23冊
読んだページ数:6053ページ ナイス数:289ナイス ![]() 再読。ぼくはこの世の時間や場所の外にいるのかもしれない。名前も何も覚えていない少年「ぼく」は、知りたいことを知るために、不思議な知恵があるという爺さんを探しに行くことになったが。買って初読した十代の時は、話の方向が期待と違って「え、こんなオチ?」と落胆した覚えがあって、再読したら手離そうと考えていたのだが、今読むとこれはこれで味わいがあるな。児童書ではあるが、老人が自分の人生を振り返る感慨は、大人になってから読んだほうが理解できるのかも。相棒のトカゲのドゥンケルが面白い。「長い旅だったなあ、ナーメンロス」 読了日:8月3日 著者:芦原すなお ![]() 再読。12歳のハンス=トマスと父は、母を探してノルウェーからギリシャまで旅をする。途中で貰った「本」には、不思議な島の話が記されていて。(初読時は気にならなかったが)母が凄く無責任、ということを脇に置けば(汗)、非常に面白い本。『ソフィーの世界』より、話自体が圧倒的に楽しい。再読なのに、「本」の続きが気になって読むの止められない。「本」の中の時代がどんどん遡り、しかし最後に全部の輪が閉じるのが見事。母、4歳の子を置いて家出するのも酷いが、ギリシャでの仕事をひょいと投げ出すのも大迷惑だな、と今は思う(汗)。 読了日:8月5日 著者:ヨースタインゴルデル ![]() 再読。四篇収録。鼠の大量発生を描いた『パニック』ラストの疾走と、『裸の王様』画塾の先生が太郎の描いた絵を見て笑う場面は、熱量が本の紙から溢れてくる。『巨人と玩具』キャラメル会社の宣伝競争。どれだけ宣伝しても、市場自体が縮小していたら売れないよね。モデルの京子は今は成功したが、いずれ人間社会の倦怠に呑み込まれてしまう気がする。『流亡記』秦の始皇帝は、万里の長城建設に着手する。軍閥の気儘な略奪も恐ろしいが、皇帝が作った新しい形の組織も怖い。地方の町の一雑貨商「私」に、これだけの情報分析力あるかなぁ、とは思う。 読了日:8月5日 著者:開高健 ![]() テーマ「祭」。最初から最後まで、とにかく熱い歌集。nonたんさん「どっこいそぉりゃあ」が潔くて好き。日野成美さん「手をつなぐ」、微妙な距離感が素敵。momongaさん「火花散る」、ぼくの目に映る浴衣姿の少女が見える。レイさん「乱れ打つ」、太鼓の音が聞こえる。ちゃありぃさんはハードボイルド。三首全部良いが、「花は死ぬ。」の視点の対比が凄い。皆様のお薦め歌人・歌集をふむふむと読む。私は和泉式部と佐藤弓生さんが好き。ネットで佐藤さんの風鈴屋の歌を見つけたのが、自分が詠み始めたきっかけ。お薦め歌集は佐藤さん全部。 読了日:8月5日 著者:夜な夜な短歌コミュ ![]() 再読。不登校になった中学生のまいは、しばらく祖母宅で暮らし、「魔女修行」をすることに。何でも自分で決める、ということ。梨木作品は『裏庭』が個人的No.1だが、これも良作。祖母の家が、100%理想郷としては描かれていないのが良い。十代の時とは違い、まいのママの立場もわかるようになっちゃったんだよね。この家で育ったママでも、祖母とは生き方が異なるから、今のママにとって祖母宅での定住は生き易い場所ではないだろう。この一ヶ月でまいは心の基礎が鍛えられたので、今後どこに行っても、自身の「北極」を見つけられると思う。 読了日:8月6日 著者:梨木香歩 ![]() 続巻が出て非常に嬉しいが、読了直後の感想は、「葛西さん……」の一言しかない(泣)。内容的には、6巻をまたぐ時期の話。著者コメント、BL誌での掲載だったそうだが(私はコミック出たら買うが雑誌見たことない)、WAをBLだと思ったことないんだよね。今巻を読んでも、それは変わらない。久保田と時任の関係は、他のどんな言葉でも説明できない「お前と俺」。 読了日:8月6日 著者:峰倉かずや ![]() ホラー作家・真木夢人の担当編集者・西任結は、5歳の息子と二人、都心から離れたマンションに引っ越す。そこはまだ新しいが、子供ばかりが奇禍に遭うマンションだった。電撃文庫『ノロワレ』は夢人の地元である閉鎖的な田舎が舞台だが、これは、周辺は自然豊かだが生活システムは都会。著者の他作品を読んでいれば、下巻で凄い展開になるな、と期待も持てるが。もし本書が初読みだったら「ここで終わりかよ!」ってくらい、話が進んでいない……。編集者の生活に興味はあるが、実両親に頼れないシングルマザーにはかなり困難な職業だと思う(汗)。 読了日:8月6日 著者:甲田学人 ![]() スペインがインカを滅ぼした直接の原因は、銃・病原菌・鉄。だが何故、旧大陸が新大陸を征服し、逆は起きなかったのか? 重複を削れば二割ほど薄くなるんじゃないかと思うが、面白い。氷河期末、人類が南北米に到達し、無防備だった大型動物が狩られて絶滅。だがユーラシアの大型動物は、人類と同時に進化して人類を恐れることを学び、生き残る。大型草食哺乳類を家畜化、ともに暮らす動物から病原菌が感染し、ユーラシア人は免疫を得る。しかし南北米には牛も豚もいなかった。東西に長いユーラシアは農作物が伝播し易いが、南北は気候に阻まれる。 読了日:8月10日 著者:ジャレド・ダイアモンド ![]() 再読。「あなたはだれ?」14歳のソフィーに手紙が届く。それが哲学講座の始まりだった。同時に、見知らぬ少女ヒルデの父から娘宛のバースデーカードも、ソフィーの元に届く。前半はひたすら哲学講座なので、それ自体を楽しめないと辛い(が、息子のパパ称賛が過剰だった『カードミステリー』よりは鼻につかない)。後半になると、一気に物語が動く。初めて読んだときは、『ソフィーの世界』の真相が衝撃だった。少佐に、書き手の造物主としての傲慢を感じる。最後は何か物悲しい。ヒルデであることと、ソフィーであることと、どちらが幸せなのか。 読了日:8月13日 著者:ヨースタインゴルデル ![]() 再読。昭和45年。離婚した母と、十歳の僕が二人で暮らす北九州のKに、母の父「てこじい」がふらりと現れた。祖父がいた、濃密な一年。時代は私が生まれる前だし、小倉に住んだこともないが、妙に懐かしい風景。母と祖父の関係は、僕から見てもややこしい。家族を振り回してきた祖父を、母は簡単には許せないが、それでも好き。祖父も態度は捻くれているが、母を溺愛している。僕と、離婚した実父が“好きの反対は無関心”状態なのとは正反対。この一年は祖父にとっても、母と僕が前に進むのに〈時が充ちる〉ためにも、必要な時間だったのだろう。 読了日:8月15日 著者:湯本香樹実 ![]() 再読。作家が古本屋で見つけた古文書は、四世紀の聖人に対して、彼のかつての内縁の妻フローリアが送った手紙だった。大人向け。私の聖アウグスティヌスに関する知識は本書のみ。彼の『告白』を既読ならば、同じ物事を両側から表現した差が見えて面白いと思う。まだキリスト教が絶対ではなかった時代の思想の変遷。夫婦と息子は幸せに暮らしていたが、夫がキリスト教に傾倒するにつれ、性愛を「肉欲」として蔑し、妻を罪に誘うエヴァと見做して離別。姑の嫁いびり、最終的に母に逆らえない夫、と現代的で面白いが、キリスト教的にこれ大丈夫なのか。 読了日:8月17日 著者:ヨースタインゴルデル ![]() 再読。12月1日から数字扉を1つずつ開けてクリスマスを待つ、手作りの古いアドヴェント(待降節)・カレンダーを見つけたヨアキム。最初の扉を開けると、小羊を追うエリーサベトの不思議な旅が始まった。ノルウェイからベツレヘムまで、二千年とキリスト教伝播の経路を遡っていく。平行して進むヨアキムの現実。こういうカレンダーあったら欲しいし、話の構造もすごく魅力的だが、『カードミステリー』『ソフィーの世界』に比べるとイマイチ(汗)。キリスト教知らないと理解できない登場人物が次々増えるのに、割と説明ない。あと父に苛々する。 読了日:8月19日 著者:ヨースタインゴルデル ![]() 再読、2000年の本。ブルーバックスの『ゼロからわかるブラックホール』と比べると、『ゼロ』は天文学でコレは物理学だな、と思う。必ず見開きで文章と図解ワンセットのシリーズ。BH自体の性質(電荷、回転の有無による4種類の違い)、BH回転速度に限界はあるか、BH間際まで行くことができたらどう見えるか、BH内に落ちた人からはどう見えるか、BHからの脱出は可能か、のような考察が解り易くて面白い。「裸の特異点」「宇宙検閲官仮説」って用語がカッコいいよね。6章の観測されているBH候補天体、今はもっと増えているだろうな。 読了日:8月20日 著者: ![]() 再読、2005年刊。ブルーバックスの『ゼロからわかるブラックホール』の円盤モデル3種の説明は神だな! と実感。本書は読み物ではなく本当に“入門”で、若干踏み込んだ内容。数式は少ないが、実際の観測結果のグラフの意味を解説する部分が多いので、グラフの読み取りが苦手な人は辛いかも。逆に、観測データの見方を学びたい場合は向いていると思う。特にX線観測。円盤不安定モデルの鹿威しのたとえは非常に直感的に理解できた。外国の活動銀河中心核(AGN)研究者が、娘にアグネスカ(最初3文字がAgn)と名付けた話にウケた(笑)。 読了日:8月21日 著者:嶺重慎 ![]() 再読、2000年刊。「なぜ重力の強い場所では時間が遅れるか」という疑問を解消すべく読んだが、それ自体は『図解雑学ブラックホール』の説明のほうが納得できそうな気がする。本書はブラックホールの説明も含むがそれがメインではない。双子のパラドックス、ホワイトホールはあるか、ブラックホールとホワイトホールを繋げたワームホールでタイムマシンは作れるか、等が面白い。「宇宙ひも」とか「ヒッグス粒子」とか「超ひも理論」(「宇宙ひも」とは別のヒモらしい)にも軽く触れられているが、この辺はまた別の本読まないと駄目なんだろうな。 読了日:8月22日 著者:二間瀬敏史 ![]() 再読。帯〈どうせ死んじゃうのになぜ生まれてきたの?〉。クリスマスを過ごすため自宅に戻った、重い病気で寝たきりの少女セシリエを、天使アリエルが訪れる。天使は永遠に存在するが、五感がなく世界を感じられない。血と肉でできた人間が感じる世界の不思議を教えて、と頼む。人間は五感があるが永遠ではない。わたしだって何千年も遊びたいと訴えるが、天使も人間も自分が何者か選べない。セシリエがなぞる、十字架上のイエスの言葉が心臓にグサリと刺さる。「神さま、わたしの神さま、なぜわたしを見捨てたのですか?」個人的ゴルデル最高傑作。 読了日:8月22日 著者:ヨースタインゴルデル ![]() 病原菌は上巻で詳しく解説。銃・鉄は直接それを扱うのではなく、科学技術発展の条件。技術が伝播し易いのは東西に延びるユーラシア。新旧の技術の組み合わせで別の技術が生まれる。中国は火薬などを発明したが、早くに統一されたため、一人の権力者が新技術を否定したら受容されない。下巻は文字の話と言語学の話が面白い。現在残っている言語の研究で、過去、どのような語を話す人々がどのように移動したか、どんな動植物を飼育栽培していたか推測。エピローグ長過ぎるが、歴史学は天文学同様に実験室で再現実験できないが一般則を導ける、に納得。 読了日:8月23日 著者:ジャレド・ダイアモンド ![]() 大学図書館で読み、後日古本購入。マリー・キュリーの娘イレーヌの伝記だが、同時にマリーの伝記。二人とも科学者で、科学者と結婚し、二人の子供を産み育てる。ノーベル賞受賞者マリーを(後年イレーヌも)科学アカデミー会員に当選させない仏物理学会。マリーを外国女と攻撃する新聞。一次大戦中マリーとイレーヌはX線車で前線を巡回し、後年放射線障害で苦しむ。フレッド、イレーヌ夫妻による人工放射能の発見は後の原爆に繋がり、核の平和利用を訴える科学者たち。しかし冷戦は、フレッド(共産党員)とイレーヌを排斥せんとする。激動の歴史。 読了日:8月23日 著者:ノエル・ロリオ ![]() 予備知識ゼロで読んだら、歴史上、フィクションの有名人が続々登場して超面白い。十九世紀末って濃いなぁ。円城作品は『Self-Reference ENGINE』とSFマガジン700の短篇のみ既読で、「話がまっすぐ進む!」と妙に感動した。死者を屍者として復活させ、労働力・兵力とする時代。新型屍者の真相にぞっとする一方、「下着ではないから」に大笑い。バーナビー好きだ。そしてラストの難解さがやはり円城作品。ワトソンが真の魂を望み、捨てたものが、ぼくの求めるもの。最初から操られているなら、結局それも含めて自分なのか。 読了日:8月24日 著者:伊藤計劃,円城塔 ![]() 今巻の名言ベスト3。茄子「さすればどんなものも危険物になります」。マキ「おしごとってそういうものだよ」。甜瓜(唐瓜姉)「『オマエの義兄』としてよーく考えろ!!」。でも姉ちゃんの見合いは、案外良さそうな気がしないでもない。天邪鬼回の扉絵の鬼灯様カッコいい。瓜子姫可愛い。漢さん回の全編通したウザさは素晴らしい。蛇帯のレディ(笑)。童子ちゃん巻いてるコマが可愛い。荼吉尼様はお迎え衣装も素敵。面接回、22番の返答が大好きだが、少女誌『なかよし』掲載で大丈夫なのか(笑)。適材適所に配置するのは鬼灯様の得意技だよね。 読了日:8月24日 著者:江口夏実 ![]() 再読。『ボヘミア王家のスキャンダル』『赤毛連盟』『花婿の正体』『五つぶのオレンジの種』『ゆがんだ唇の男』『まだらの紐』の初期6篇。でも、一番面白いのは高橋克彦氏「鑑賞」の、ホームズ人物評。〈コカイン(麻薬)の愛好者で、しばしば幻覚に悩まされる。偏執的な変装好きの上に自信過剰、しかも鼻持ちならない貴族趣味をひけらかし、〉〈ただ一人の理解者であるワトスンを無能と嘲笑い、まるで部下のごとく顎で使い回す。〉〈冷静に考えると、どうしてこんな探偵が多くの読者に支持されているのか分からなくなってしまう。〉超納得(笑)。 読了日:8月27日 著者:アーサー・コナン・ドイル ![]() 再読。夫実家で読んだ創元『四人の署名』の感想を既に読メ登録済みだが、私が人生最初に読んだ原作ホームズは新潮のコレ。……つくづく、“初めて読むホームズ”には向いていない本だ(汗)。のっけからコカインを打ち、他の探偵を貶し、数頁に渡って自画自賛。先に他のホームズの美点を認識してからじゃないと、「こいつ性格悪い」がホームズ観の根底にインプットされるんだ(汗)。依頼人メアリ・モースタン嬢が来て、事件が始まってからは面白いんだけど。依頼人自身が手際よいと、話がさくさく進んでいいよね。この時代の恋愛は発展が早いのか。 読了日:8月29日 著者:コナン・ドイル ![]() 再読。第一部は殺人事件をホームズが解決し、第二部は事件の原因である二十年前の米国での話。第二部はそれはそれとして一つのまとまった面白い物語ではあるのだが、私がホームズ物を読むときはホームズの奇人天才っぷり(注:褒めてます)を堪能したいので、こういうのは求めるものと違う……。と思いつつ、こんなスッパリ前半後半に分かれるのではなく、現在と過去が一章ずつ交互に出てくる構成だったら非常に好みかもしれない、とちょっと考えた。二部はワトスンの文章ではないそうだが、誰視点でマクマードを描写した設定になっているんだろう。 読了日:8月29日 著者:コナン・ドイル 読書メーター PR |
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