読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4060ページ ナイス数:234ナイス ![]() 再読。私が一番苦手で、だけど多分、一番重要な巻。キキ16歳、コリコでの4年目の生活に、変な女の子ケケがずかずかと割り込んでくる。自分の居場所を乗っ取られそうな恐怖は、ホラーだ。本シリーズは今まで、依頼人の無神経さに傷つけられることはあっても、狙って悪意をぶつけられることはなかったのに、ケケの言葉は的確に抉ってくる。12歳という年齢で大目に見られがちなのが腹立つ。魔女としても、人間関係でもぐらぐらと揺らぐキキが、辿り着いた本心。真っ逆さまに落ちていくシーンは名場面だと思う。一応ケケにもケケなりの事情はある。 読了日:7月2日 著者:角野栄子 ![]() 再読。キキ17歳、とんぼさん18歳。前巻でキキは想いを自覚したけれど、とんぼさんは遠くの学校に進学。二人の文通。キキの恋心は女の子らしいし、女心をわかってないとんぼさんも男の子らしくて(笑)、読んでいて微笑ましいわー(映画版のトンボなら、もう少し女の子への対応が上手なんじゃないか、という気はする)。でも決めるところは決める。モリさんの弟ヤアくんとパン屋のノノちゃん初対面。ヨモギさんとゆすらうめジュース。ララさんの花嫁のベール。突然のお母さんの病気。小粒だけど、後から重要になってくるエピソードの詰まった巻。 読了日:7月3日 著者:角野栄子 ![]() 再読。キキ19歳、とんぼさんと遠距離恋愛中。二人の関係は、ジジから見るとまどろっこしいようで。後輩魔女のライちゃん可愛い。町長さんにも春。十代最後の年、二十代に繋がる何かが欲しいのに、見つからなくて苛々。ほうきに上手く乗れなくなったり、ジジの言葉を聞きとれなくなったり。ジジは、恋猫との未来を語るのに。とんぼさんはいない。13歳から少しずつ大人になっても、年齢相応の悩みは尽きない。いろいろあったけれど20歳の誕生日を迎え、卒業したとんぼさんが帰ってきて。キキが自分用に花嫁のベールを運ぶところを見たかったな。 読了日:7月4日 著者:角野栄子 ![]() ひとりぼっちの闇の王様が、少女に出会うお話。人とは異なる理で生きる幻獣が住む世界は、残酷で美しい。人と幻獣の共存を目指す白い少女フェリ、兎頭の闇紳士クーシュナ、人工蝙蝠トローの旅。フェリに撫で撫でされてデレるクーシュナ可愛い。カクヨム掲載分は全て既読だが、書店で目次見て、これ最初から読み通すべきだと思った。正解だった。第0話以降の破壊力が凄い。読了後に、カクヨムのみ掲載「闇の王様を待ちながら」を再読すると、クーシュナの心情が更に迫ってくる。1冊完結想定だそうだけど、できれば、彼らの旅が長く続きますように。 読了日:7月8日 著者:綾里けいし ![]() 宇宙空間で人型ロボットのチームが疑似戦争する競技、ストライクフォール。プロ選手を目指す高校生・鷹森雄星。年子の弟・英俊は、プロ一軍デビューが決まっている。二人の幼馴染・白咲環。脳内を『無限のリヴァイアス』が過ったが、あの兄弟みたいに険悪でなくて良かった。人類の文明レベルを超える技術(特に軍用で発展)を使用するが、技術が世界にもたらす変容とかではなく、弟に超えられた雄星の葛藤、環との関係、競技でひたすら上を目指す熱い物語。事故も、世界の謎ではなく政治絡みのようだ。試合終了後の処遇が非常に気になる。続巻期待。 読了日:7月9日 著者:長谷敏司 ![]() 職場本棚。考古学者と各界専門家の対談。どの話もめちゃくちゃ面白い。「木材」遺跡出土木炭を鑑定する古植物学者。「絹」蚕糸研究者は、蚕の種類と機織技術それぞれの伝来経路を指摘。「銅」銅工業社長が銅鐸を復原。「鉄」日立金属博物館、古墳時代以前の小規模製鉄。「赤色顔料」薬学部教授が成分分析、酸化鉄系と水銀朱系。「鋸」鋸目立職人が古墳出土鋸を復原して変遷を研究。他に「国境の考古学」「東シナ海」「地形の復原」「漢字」「結婚習俗」「縄文土器」「栽培植物」「石臼」。古代の生活を明らかにするには、幅広い分野の知識が必要だ。 読了日:7月13日 著者:森浩一 ![]() 再読。1962年(前著、岩波新書『インカ帝国』3年後)刊。歴史研究は現在から近い過去、遠い過去へと遡る。スペインのインカ征服から過去へと記される、研究史の色の強い本。題の如く8割方インカより前の時代で、前著に掲載されていた時代ごとの文化圏地図と見比べつつ読んだ。本書、遺跡や出土品の図版は多く説明も詳しいが、地図が最初にしかないんだ。クライマックスは前著~本書の間に行われた、コトシュ遺跡「交叉した手の神殿」の発掘。と、「あとがき」著者の研究遍歴が一番面白いかもしれない。済州島、満州、ニューギニヤ、から南米。 読了日:7月13日 著者:泉靖一 ![]() 帯によると三部作の1だが、職場本棚には1と2のみ。10歳にも満たない双子の少年が、母と離れ(父は前線)、初対面の母方祖母宅へ疎開。双子は妙に賢く、応対した本屋の主人は怖かったろう。二人のルール。見たこと聞いたこと実行したことは書くが、感情は記さない。予備知識ゼロ、具体的な年代や地名は一切書かれていない(注釈も最後まで読まない)が、靴屋がユダヤ人なのは解った。連行後、女中の身に起きたこと。祖母は不潔で偏屈だが、おばあちゃんと孫は割と理解し合っていると思う。父は勿論、恐らく母よりも。ラストは「え?」と驚いた。 読了日:7月14日 著者:アゴタクリストフ ![]() 再読。船越達哉は41歳、16年前のヨット太平洋横断中の事故を引きずっている。妻に捨てられて離婚した直後、事故当時の恋人・月子から電話。船越に知らせずに産んだ娘・陽子が家出したという。『楽園』『光射す海』の著者らしい海洋小説、且つ家族小説。読み始めたら止まらず面白いが、全て船越にとって最良のタイミングで事が起きるような。電話が離婚前だったらドロドロ修羅場だった筈。月子は美人だが超性悪で毒母なので、堕胎費用払ってでも別れたい気持ちは分かるが、堕ろしたら今、娘が存在してないんだよな。事故の謎を追って下巻、海へ。 読了日:7月17日 著者:鈴木光司 ![]() 船越は陽子とヨットでパラオへ、そして17年前の海域へ。事故は何故起きたか。閉鎖環境での人間関係悪化、月子が一番悪いが、乗せた船越も大馬鹿。話は面白く、初読時は全てのパズルが綺麗にはまるのが快感だった。今回は再読で内容知ってて冷静なせいか、二十代で悲惨な経験したのは分かるが、“船越の願望がパーフェクトに充足された話”と思う。離婚直後に出会った若く魅力的な女性、血を分けた娘、過去の克服。息子が納得したら船越母の立場がない。上の世代の歪みが全て蓄積してしまった陽子の、今後の人生が素晴らしいものでありますように。 読了日:7月17日 著者:鈴木光司 ![]() 再読。高2の高野槙子は、3年の桧田玲子に〈海の泡同盟〉の記録係に勧誘される。それは自殺をするための集まりで、槙子に期待されたのは見届け役だった。玲子の描写がとにかく非現実的に美しい。玲子の旧友・富山久美が印象的。ヨドムに連れて行かれることを恐れる2年男子の青木。死はヒカルモノ。生はヨドム。槙子は幼時に親友を亡くした。生き残る側に回ってしまうと、ヨドムに襲われる。新聞記者・高見が語る「人間というのは暗いうちには滅びない」「明るさこそが、滅びの姿」は、太宰『右大臣実朝』だ。白い紙面が輝いているかのような物語。 読了日:7月18日 著者:谷村志穂 ![]() 衰退した人類が、マシンから略奪して生きる未来。アンドロイドのアイビスが僕に聞かせる、ロボットやAIに関する7つの物語。〈フィクションは『しょせんフィクション』ではない〉。『宇宙をぼくの手の上に』『ときめきの仮想空間』『ミラーガール』『ブラックホール・ダイバー』『正義が正義である世界』『詩音が来た日』『アイの物語』。「正しい部分も悪い部分も含めて、あなたの全てを許容します」介護用アンドロイド詩音が歌う『瑠璃色の地球』が印象的。スペックの異なる存在であることに優劣などない。「理解できなくていい。ただ許容して」 読了日:7月28日 著者:山本弘 ![]() 再読。太宰治『右大臣実朝』再読中に浮気して本書へ。源頼朝の旗揚げ~承久の変。それぞれの道で権力を目指す四編が少しずつ重なりつつ、同じ時代を違う側面から描いていく。『悪禅師』頼朝の異母弟・義経の同母兄、阿野全成。本書読むまで知らなかった地味な人物からの視点で面白い。『黒雪賦』梶原景時。『いもうと』北条政子の妹で全成の妻、保子(阿波局)。無邪気に見えて底が知れない。『覇樹』北条義時。公暁も実朝さえも見殺しにする静かな対決が凄い。承久の変の直前の協議、三浦義村との無言のやりとりや大江広元・三善康信の演説が圧巻。 読了日:7月30日 著者:永井路子 読書メーター PR |
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