外は氷点下の夜。ベッドで寝ようとした男に、ハードカバーが言った。
「寒いわ。あなたの布団に入れて」 「明日、朝早いんだよ」 と男は渋る。そこに、文庫が口を挟んだ。 「今夜は私よ。家に持ち帰っておいて、手も触れないなんて、失礼だわ」 「いや、だから明日は」 「新入りは黙ってなさい」 ハードカバーの声はキツい。文庫も言い返す。 「重い本は疲れる、って嫌われるわよ」 「何ですって?」 そこに漫画も割り込む。 「私だって、ずっとご無沙汰よ」 おろおろする男を尻目に諍いはヒートアップし、そして枕元に積まれた本の山が、男の頭に向かって崩れ落ちた。 PR |
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