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【小話】修羅場
 外は氷点下の夜。ベッドで寝ようとした男に、ハードカバーが言った。
「寒いわ。あなたの布団に入れて」
「明日、朝早いんだよ」
と男は渋る。そこに、文庫が口を挟んだ。
「今夜は私よ。家に持ち帰っておいて、手も触れないなんて、失礼だわ」
「いや、だから明日は」
「新入りは黙ってなさい」
 ハードカバーの声はキツい。文庫も言い返す。
「重い本は疲れる、って嫌われるわよ」
「何ですって?」
 そこに漫画も割り込む。
「私だって、ずっとご無沙汰よ」
 おろおろする男を尻目に諍いはヒートアップし、そして枕元に積まれた本の山が、男の頭に向かって崩れ落ちた。

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【2012/03/09 01:29 】 | 小話 | コメント(0)
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