読んだ本の数:12
読んだページ数:4723 ナイス数:510 ![]() 十代の頃に実家で読んで以来、大好き(でも、著者の作品コレしか読んでないらしい……)。満鉄で列車ダイヤのアリバイ崩しなんて、血沸き肉躍るよね。私の満鉄好きを形成した一冊だと思う。資産家のロシア人ペトロフが殺された。ロシア語のできる鬼貫警部が捜査を担当し、被害者の三人の甥を疑う。三人はそれぞれ相続に関して動機があるが、全員にアリバイもあり……。大連に行ったり旅順に行ったり哈爾浜に行ったり。聞き込み相手によっては北京語しか通じなかったり。中国人でも南方系だと北京語喋れなかったり。国際色豊かでめちゃくちゃ楽しい。 読了日:10月03日 著者:鮎川 哲也 ![]() 表紙:いのまたむつみ、漫画:藤森ゆゆ缶。1425年、5代将軍足利義量死去から、籤引き将軍6代義教の恐怖政治と暗殺(嘉吉の乱)。8代義政、応仁の乱(1467~77)と東山文化。応仁の乱の敵味方ワケわからなさ凄い(苦笑)。義政に頼まれて還俗した義視も義政の無責任の被害者ではあるので、9代(義政息子)死後の10代が義視の息子なのは、良かったような気が若干する。幕府ボロボロだけど。駿河の北条早雲、薩摩の島津貴久、安芸の毛利元就。甲斐の武田信玄vs越後の上杉謙信。1570頃まで扱うが、信長・秀吉・家康は恐らく次巻。 読了日:10月03日 著者: ![]() 約20年ぶり再読、結末は覚えてた。1974年の作品。新幹線公害を解決しなければ、開業十周年十月一日に新幹線を脱線させる、という政府と国鉄への脅迫状。本気を示すため犯人は、人的被害を出さずにあの手この手で新幹線の運行を妨害する。警察は期日までに、犯人を特定し逮捕できるか。頭脳戦が楽しい。名古屋の新幹線公害訴訟。53頁の新幹線網構想の地図、本当に日本中に路線が張り巡らされているが、大分から四国経由で新大阪とか、下関から日本海岸通って青森とか、こんなプランあったのか! 開業済路線と長崎ルートしか知らなかったよ。 読了日:10月04日 著者:清水 一行 ![]() 再読。1978年の作品。皮革業界紙の記者・石森は、ブルートレイン「さくら」の切符を譲れと謎の男たちに脅迫される。振り切って「さくら」に乗り込んだが。業界紙社長は東京で、政府の不穏な動きを掴み取材を始める。博多→東京へと走行する車内で、進展する事態。石森が業界紙記者だからこそ、車内の男たちの正体に気付くのが良い。真の黒幕の衝撃、最後のもみ消し方が容赦ない。自衛隊が二・二六事件のようなクーデターを起こすのではないか、みたいな想定、ある時期の作品には多い気がするが(実家に複数あった)、今時でも成り立つだろうか。 読了日:10月11日 著者:小林 久三 ![]() 大学時代のサークル仲間・通称パンドラの十三回忌に合わせ、卒業直前(1971)に埋めたタイムカプセルを開くために七人が集まった温泉宿が、雪で孤立。カプセルからは、指輪をはめた指が。探偵役・塔馬双太郎はシリーズがあるようだが、私は本書が初。仲間の推理作家・長山の性格と推理が、事件ややこしくした主因の気が(苦笑)。学生時代の友人が、会わない間に人間変わってしまうのと、昔から屑だが当時は見抜けなかったのと、どちらが辛いだろう。それでも思い出は特別。70年前後の空気がわかる人にはいろいろ懐かしいんだろうな、と思う。 読了日:10月12日 著者:高橋 克彦 ![]() 『広域指定』の1冊前の話。若手の高野が警察手帳を紛失する『掏られた刑事』、少年の転落死『墜ちた者』、ストーカー『Mの行方』、病院へのクレーム『脈の制動』、マンション強盗『伴連れ』の5篇。警務課の柴崎警部の本務は捜査ではないが、高野のフォローで何のかのと出番。1篇目の高野は警察務まるのかという感じだが、後ろ2篇で成長したなぁ。見た目通りじゃない事件ばかりだが、警察が扱う事件には見た目通りの事件も恐らく沢山あって、その中にこういうのが紛れているから難しい。人間怖い、と思うのが『M』。表題作は読後に救いがない。 読了日:10月16日 著者:安東 能明 ![]() 職場本棚。中国で発生した致死率60%の強毒性インフルエンザが、初期の隠蔽により世界中に拡散。空港検疫、帰国者のホテル拘束。感染者の追跡調査。マスクや消毒薬、病床不足。サイトカイン・ストーム。2010年の作品だけど予言者ですか。感染者が発生した東京が封鎖されるも、危険な側に総理も内閣も残ってる。主人公(元WHO医師)及び周囲に優秀な人間が揃ってるが、著者は『復活の日』みたいな滅亡SFではなく、こう対処したら乗り切れる、というベスト解を書きたかったんだろう。ただ治療薬もワクチンも日本が開発成功はできすぎかな。 読了日:10月17日 著者:高嶋 哲夫 ![]() 1巻未読だが特に支障なし。栃木県の病院を退職させられた看護師から、広域捜査専任特別調査室SROへ投書。SROは前の事件の処分で身動きし辛い中、密かに捜査開始。その病院では、死を願う末期患者が不審に死んでいた。読者に対しては犯人は開示されているので、SROがいかにして犯行の証拠を掴むかと、犯人側との攻防を味わう本だと思う。(本人は宗教的行為と信じているが)実際は独善的な論理で連続殺人を犯すシリアルキラーの言動は興味深いが、警察側はSROも上司も警察物として読んでて違和感あるキャラばかりで苦手。神父様が不憫。 読了日:10月17日 著者:富樫 倫太郎 ![]() 約20年ぶり再読、船の事故と女性にお金あげたことだけ覚えてた(苦笑)。昭和22年、青函連絡船が沈没。浜に流れ着いた遺体が二人多く、身元不明。事故当日の朝、道内の岩幌で起きた放火殺人。函館の弓坂警部補は、下北や東京まで犯人の手掛かりを追うが。読み始めたらやめられない。仏が浦の断層崖、グリンタフという語に反応(ブラタモリの影響)。東京の時子を何度も訪ねてきた男は結局誰だ。丹波の熊袋の分家田圃の恐ろしさ。次男三男の畑に肥を何度運んでも、流れて長男の畑が潤う。下北の八重の故郷も、北海道の堀株も、刑余者も皆貧しい。 読了日:10月19日 著者:水上 勉 ![]() 再読。神経科医の会沢を訪ねてきた若い女性が、婚約者・田村がノイローゼ気味だと相談する。田村の三人の従兄が、次々失踪したというのだ。熊本の原田、沼津の小山、東海村の熊谷。大正13年生の会沢が42歳なので、1966年頃が舞台。東海村の暗い海。阿蘇山で死んだ老教師の自画像。最後まで読めば謎は解けるが、途中だとホラーみたいで不気味。全体的にトーンが暗い。単調な生活に疲れた中年が、ついフラフラと全てを投げ出して姿を消したくなるような心理、むしろ私は10代20代のほうがどこかに行きたかったので、今はわからないかなぁ。 読了日:10月22日 著者:遠藤 周作 ![]() 再読。古い本なので表紙違い。昭和19年、水銀購入の密命を帯びてスイスへ向かった関谷中佐。現地では、友人の駐在武官・矢部が不審死していた。到着早々、購入代金入りのトランクを奪われ、矢部の死の謎とトランクの行方を追うことに。跋扈する各国諜報部員たち。誰が敵か味方か、“D”とは何か? 密かな和平交渉。歴史的にはそうなる筈だけれど、最後、報われない……。十津川警部の鉄道ミステリで有名な著者だが、私は、本書と『天使の傷痕』『発信人は死者』を推す。伊号潜水艦って良いよね(それは『発信人』)。『幻奇島』も好きだったな。 読了日:10月22日 著者:西村 京太郎 ![]() 最終巻! 漢さん回、そりゃ祭りだよね(笑)。祝電笑った。言霊回、名前ルビは記録課の仕事が増える。凶霊回、スカーレット超可愛い。桃太郎回、「上下の蛇口の水量のバラス」めっちゃ悪い(笑)。檎回、良い話。檎ミキ描きたくなるわー。特徴回、最終回間際にめちゃくちゃ平常運転(笑)。ヒエロニムス・ボスと「シマウマは何頭?」好き。披露宴回、全補佐官の見せ場が素晴らしい! 最終コマの花嫁さんの笑顔が最高。人事回、最終話。木の「あと少し」長い。このまま日常が続いていきそうなラスト。著者様、連載お疲れ様でした、楽しかったです。 読了日:10月23日 著者:江口 夏実 読書メーター PR |
![]() |
![]() |
|
![]() |