![]() 世界に六人しか確認されていない魔術師のうちの二人、サイモン・L・スミスクラインと佐杏冴奈が魔術実験を行うために訪れた、外界から隔絶された魔学部付属研究所。その地下実験室で、密室状況で起きた殺人事件。 佐杏先生が早々に退場したため、主人公・天乃原周が探偵役を務めることになり、密室トリックの解を示して犯人を告発する。 しかし後日、先生は、「お前の推理には矛盾点が多過ぎる」と周を叱る。 ……ということは、先生ならばより合理的な解決編を用意できた筈だ。それはどんな推理? と思って、“周の解”以外で事件の説明が可能かどうか、考えてみることにする。
以下ネタバレ注意。
“周の解”は、事件の真相を隠すためのでっちあげ。真相は、以下のようになる。 ・第一の事件、密室状況の実験室でのサイモンの縊死。先生が魔術で、所外のオズエージェントから調達した金属材料で合鍵1を製造、解錠して死体を発見した。実験室のマスターキーはサイモンの服の中。これは自殺、サイモンが自分で室内から施錠した。 ・第二の事件、密室での神室一の縊死。マスターキーのオリジナルと、合鍵1は警察が所外に持ち出し中。先生が同様に合鍵2を製造、死体を発見した。これは、サイモンの妹ジュノーが神室を殺し、自分で魔術で製造した合鍵Jで室外から施錠した。 ・実は、魔術師はサイモンではなく、ジュノー・L・スミスクラインである。 この【実はジュノーが魔術師である】という事実を、ジュノー・周・先生以外には隠して、事件を説明しなければならない。 ジュノーも、“兄を殺した神室に復讐した”旨の遺書を残し、密室トリックを解説して自殺する予定であったことから、別の解の腹案はあっただろう。 で、こんな筋書きを考えてみた。 ・第一の事件。神室は地下実験室にいたサイモンを訪ね、どんな口実で説得したかは謎だが、魔術師サイモンにマスターキーの合鍵Sを作らせる。その後サイモンを殺害し、合鍵Sで室外から施錠した。 ・第二の事件。ジュノーは地下実験室で神室を殺し、彼から奪った合鍵Sで室外から施錠した。 この場合、ジュノーにしか密室トリックを実行できない、という方向で犯人を絞るのが難しいが、彼女の荷物から合鍵Sが発見されれば、物的証拠と見做されるのではないか。 真相でもジュノーが合鍵Jを製造していることから、オズエージェントが管理する金属材料を使わずとも、所内で適当に代替材料は調達可能だったと思われる。よって、神室がそれを入手したと説明するのも不自然ではなかろう。 ところで。 実験が失敗したことに関して、サイモンが〈魔術の理論は完璧だった〉ことを全く疑わないのが疑問だ(苦笑)。 そもそも彼自身が考案した理論ではないし。本人の理論だったとしても、言えるのはせいぜい“理論に内部矛盾はない”程度だろう。それが正しいかどうか確かめるのが実験なわけで、失敗したら、〈自分は本当に魔術師なのか〉を疑う前に、理論を疑うべきだ。 ただ、自分が魔術師か否かは、すぐに確かめられるんだよね。ジュノー不在で魔術を演術してみて、発動しなければ。それで確信したんだと思う。以上。 PR |
![]() |
![]() |
|
![]() |