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【小話】顔
 真っ暗な夜だった。人気のない坂道を必死に駆け上がっていた男は、蕎麦屋の屋台の明かりを見つけると、息を切らしながら走り寄った。
「い、今そこで、変な女が、女の顔が」
 蕎麦屋の主人が振り向く。
「それはこんな顔でしたかい?」
と言った主人の顔は、ゆで卵のようなのっぺらぼう。
「ち、違う」
 男は首を振る。
「もっとこう、口が」
 説明しようとする男の後ろから、女の声がした。
「ねえ、私キレイ?」
 手に鎌を持ち、耳まで裂けた口で笑う女の顔を見た男とのっぺらぼうは、「ぎゃああ!」と叫んでその場から逃げだした。

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【2011/09/07 23:00 】 | 小話 | コメント(0)
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