下永聖高『オニキス』(ハヤカワ文庫JA)読了。
表題作について歌を詠もうと思い、思考過程をメモしておく。
最初に考えたのはコレ。
黒鍵を指が滑れば旋律が貫くように降る交差点
ラスト少し前の、一番印象的な交差点のシーン。
作中には黒い瞳、夜の海、グランドピアノのボディ、黒瑪瑙(オニキス)のピアス等が登場するが、私にとって「黒」はピアノの黒鍵のイメージ。
マナ粒子という素粒子が過去へ情報を送ることにより、現実が書き換えられてしまう世界。多重世界を貫いて、ピアノの音は鳴り響く。
黒鍵を指が滑れば旋律が粒子のように降る交差点
黒鍵を指が叩けば交差点、交差点、降りそそぐ旋律
鍵を叩いて(ピアノを弾いて)いるので、「旋律」の語を使わずとも、そこに音楽があるのではないか。省く。
黒鍵を指が叩けば交差点、交差点、飛び越える現実
次々書き換えられる現実で、飼っている熱帯魚の種類も変わる。
水槽を泳ぐ魚と交差点、白い指先踊る黒鍵
交差点より、ラストのほうが自分の中で重要度が高いと判断。黒鍵は外せない。
君がいないこの現実を生きていく白い指先踊る黒鍵
熱帯魚を詠み込むか否か。自分たちも、檻(水槽)に閉じ込められているのでは?
君がいないこの現実を生きていく水槽のなか踊る黒鍵
語感の好みの問題(「泳ぐ」「踊る」)で、多分、これで確定。
君がいないこの現実を生きていく泳ぐ魚と踊る黒鍵
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