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2017年8月の読書メーター
読んだ本の数:14
読んだページ数:4025
ナイス数:376


東亰異聞 (新潮文庫)東亰異聞 (新潮文庫)感想
魑魅魍魎が跋扈する帝都・東亰(とうけい。東京ではない)を舞台とする伝奇ミステリ。『屍鬼』もそうだったが、「ここまで読んだら続きが気になって止められない」というところに到達するまでが長い作家さんかなぁ。鷹司公爵家の関係者二人目が襲われるまで、魔人・怪人が羅列されてるみたいで読むのが辛かった。事件の連続性が出て以降は、ちゃんとミステリしてて面白いのだが。第5回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作だそうで、酒見賢一『後宮小説』や鈴木光司『楽園』(『リング』作者)が受賞した賞だと思うと、ファンタジーって幅が広い。
読了日:08月01日 著者:小野 不由美

魔性の子 (新潮文庫)魔性の子 (新潮文庫)感想
母校の高校に教育実習で戻った広瀬と、「彼を苛めると祟る」と周囲から浮いている生徒・高里。ここではない何処かに自分の本当の居場所がある、という感情。異質なものを排除するか、恐れて媚び諂うか。人間関係の嫌らしさや集団暴走する過程は、ホラーとして読み所だと思う。聖人君子過ぎるのは、やはり不自然。私は〈十二国記〉シリーズ『月の影 影の海』のみ既読だが、もし全く知らなかったら、本書の終盤何もわからず置いていかれるんじゃないか。と思ったが、出版はこちらが先なのか! 一応これ1冊でも読めるように書かれている筈なんだな。
読了日:08月02日 著者:小野 不由美

キュリー夫人伝キュリー夫人伝感想
キュリー夫人の長女がイレーヌ(ノーベル化学賞)、次女が本書の著者。イレーヌの伝記既読なので、結婚以降のマリーの人生は大体知っているつもりだったが。ポーランドの子供時代のマーニャ。留学するために、姉妹で互いに学費を稼ぎ合う苦労。パリに来て、ピエールと結婚。ポロニウムが先に存在が予言され命名されていたのは初めて知った(単離されたのはラジウムが先)。女であり外国人であるハンデ。二人産んで子育てしながらノーベル賞2回とった研究者と自分を比べるのも烏滸がましいが、自由に学べるというのは幸せなことで、頑張ろうと思う。
読了日:08月04日 著者:エーヴ キュリー

3月のおはなし ひなまつりのお手紙 (おはなし12か月)3月のおはなし ひなまつりのお手紙 (おはなし12か月)感想
小二娘が学校の図書室で借りてきた本。読書感想文を書くというので、親も読んでみた。父方祖母は元教師で厳しく、母方祖母は親しみ易い、という距離感の違いがリアル。その父方祖母の家で、曾々祖母の代からの七段飾りを飾るのを手伝ったゆいは、おばあちゃんの意外な一面を知る。昔は悪戯っ子だったし、今も実は茶目っ気あるんだね。
読了日:08月04日 著者:まはら 三桃,朝比奈 かおる

ルルとララのクリスマス (おはなしトントン43)ルルとララのクリスマス (おはなしトントン43)感想
将来の夢はお菓子屋さん(今年の、パティシエールのプリキュアにもハマってる)の小二娘が、自分の図書カードで買った本。小学校や学童保育で同シリーズの他の本を4冊既読で、未読の本を選んだらしい。お菓子屋さんを営むルルとララが店に飾った初めてのクリスマスツリーには、吊るすオーナメントがない。お料理レシピ本でもあるが、オーナメントと思いやりをめぐるきちんとした物語だった。
読了日:08月04日 著者:あんびる やすこ

いまファンタジーにできることいまファンタジーにできること感想
2011年刊(2009年の本の邦訳)。私は所謂ライトノベル的なファンタジーを書く人間で、それはル=グウィンの語るファンタジーとは別物と思うけれど、それでも根底にあるのは中学時代に貪るように読んだ『ゲド戦記』や、エンデ『はてしない物語』。ファンタジーとは何だろう、と考える。お伽話、民話、神話、児童書。『子どもの本の動物たち』で扱う多くの本が未読なので、キプリングとか読んでみたい。ペットを飼ったことも、釣った魚をさばいたこともない私は、人間以外の「他者たち」のいない世界に住んでいる。〈失われた荒野への憧れ〉。
読了日:08月05日 著者:アーシュラ・K・ル=グウィン

宇宙を測る―宇宙の果てに挑んだ天才たち (ブルーバックス)宇宙を測る―宇宙の果てに挑んだ天才たち (ブルーバックス)感想
職場本棚、1999年の本の邦訳。古代ギリシャの頃から、地球の大きさや、月や太陽までの距離を測り続けた人類。天動説の時代も、単にそう信じていたのではなく、当時なりの測定精度による結果を説明すべく、理論を構築していた。後半、現代に繋がる天文学者たちが出始めると急に話がややこしくなるが、ダークマターなんて2017年でも未解決の問題なんだから仕方ない。90年代、いろんな研究者がハッブル定数の値を50だ、80だと主張して論争するくだりが面白い。星や銀河までの距離を測る、というのはそれだけで楽しいのだ、と再認識した。
読了日:08月08日 著者:キティー ファーガソン

どうぶつえんのいっしゅうかん (わくわくライブラリー)どうぶつえんのいっしゅうかん (わくわくライブラリー)感想
小二娘が学校の図書室で借りてきた本。毎日、主役となる動物は変わるけれど、話は微妙に繋がっていく。同じ台詞をみなで繰り返すフラミンゴや、各々が超マイペースなペンギン観察のために引っ越してきたサギに笑った。キリンは最後、良かったね。ハトの伝言ゲーム酷い(笑)。
読了日:08月09日 著者:斉藤 洋

百鬼夜行抄 1 (朝日コミック文庫)百鬼夜行抄 1 (朝日コミック文庫)感想
職場で借りた。怪奇作家・飯嶋蝸牛の孫・律は、幼時から妖鬼を見る目を持つ。怖いことも起きるが割と笑える。守護だけど命“しか”守ってくれない青嵐とか。「精進おとしの客」祖父の初七日。「闇からの呼び声」従姉・司の痣。「あめふらし」祖父の友人の遺品整理。「お前はこの先背が伸びない」って妖魔が(笑)。「桜雀」隣家と境界争い。尾白・尾黒が迷惑だけど可愛い。「目隠し鬼」桜模様の着物。「逢魔の祭」箱庭。田舎の奇祭で司が巫女役。「人喰いの庭」霊力皆無の母と祖母が、無自覚に事態を混乱化……。「雨夜の衝立」鬼と賭け麻雀(笑)。
読了日:08月09日 著者:今市子

黒祠の島 (祥伝社文庫)黒祠の島 (祥伝社文庫)感想
失踪した作家・葛木志保を探しに、彼女の故郷であるらしい「夜叉島」を訪れた式部剛。その島は、明治期の国家神道に統合されなかった独自の信仰(黒祠)を保ち、余所者を厭う。宗教的権力者に掌握された排他的な孤島という、何でも揉み消せそうな環境が怖い。周囲全てを信用できない状況で、葛木は見つかるのか? スロースターター気味の作家さんだと思っていたが、本書は“失踪者を探す”という目的が冒頭からハッキリしていて、グイグイ読まされる。信仰の真の意味、島民独自の価値観に基づく、過去の事件と今回の事件。めちゃくちゃ面白かった!
読了日:08月11日 著者:小野 不由美

製造人間は頭が固い (ハヤカワ文庫JA)製造人間は頭が固い (ハヤカワ文庫JA)感想
最初の話のみ創元アンソロジーで既読。私個人は、上遠野さんが出すなら出版社どこだろうとハードカバーだろうと喜んで買うが、コレ電撃の上遠野作品をほぼ全読破してないと意味わかんないのでは(汗)。SFマガジン連載で、初めて触れた読者がいたら困ったろう……。合成人間製造の秘密。ブギー初巻からほぼリアルタイム読者だがローファンタジーだと思っていたけれど、「SFなのか?」と改めて考えると、人類を超える存在はどこから生まれるのか、辺りがSFなのかなぁ。進化はまぐれから生じる。未来は、現在の世界で無能とされている物の中に。
読了日:08月15日 著者:上遠野浩平

黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人 (新潮文庫)黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人 (新潮文庫)感想
2002年に発覚した、保険金連続殺人のノンフィクション。何で全く記憶にないのか、と思ったら私、当時TV見られない環境だった。主犯・吉田純子と、その詐欺被害者でありズルズルと共犯者になってしまった3人。何でそんな嘘を見抜けないのか、と思うが、狂的に嘘が上手いのだろう。私は福岡市出身のため、方言が容易に脳内再生される。純子の家は裕福ではないが、同程度の家は他にもあり、全員が純子になるわけではない。高校看護科で妊娠カンパ詐欺を起こした際に「あんな女を看護婦にしてはいけない」と言った同級生が、結果的に正しかった。
読了日:08月18日 著者:森 功

原子力戦争 (講談社文庫)原子力戦争 (講談社文庫)感想
再読。元は1976年の雑誌連載で、74年の原子力船「むつ」放射線漏れ事故直後から始まる小説。テレビディレクター大槻の原子力発電取材は、経済戦争の様相。推進派も反対派も「本当に安全(危険)か」そっちのけで、利益や政治的思惑で暗闘しているのが怖い。ある外国製原子炉の欠陥の指摘が、他国の原発メーカーの裏工作だったりする伏魔殿。私は数値がないと納得できないが、住民運動家の「わたしたちにわかるように、やさしく説明できないもの、なにかややこしくてよくわからないものは、結局安全じゃないのよ」という台詞も考えさせられる。
読了日:08月30日 著者:田原 総一朗

オレがマリオ (文春文庫)オレがマリオ (文春文庫)感想
著者は311後に石垣島へ移住。2013年の歌集の文庫化。『サラダ記念日』『チョコレート語訳みだれ髪』『会うまでの時間』は借りただけだが、コレは買わなきゃだめだと思った。〈子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え〉〈「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ〉〈一年後の私はここで元気だとあの日の我に言う名倉湾〉〈母さんは合っていたのか人生に答え合わせはなくて海鳴り〉。震災前作品は子供の歌が好き。〈「きらい」とか「すきくない」とか「にがて」とかピーマンが子の語彙を増やせり〉。
読了日:08月31日 著者:俵 万智


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【2017/09/03 12:05 】 | 本関係 | コメント(0)
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