忍者ブログ
2019年8月の読書メーター
読んだ本の数:18
読んだページ数:6371
ナイス数:471


感染 (小学館文庫)感染 (小学館文庫)感想
著者デビュー作。仲沢葉月はウィルス研究医。将来有望な外科医の夫と前妻の間の息子が誘拐されたが、夫は女に呼び出されて外出したまま音信不通。最悪の結末後、夫の息子が海外で臓器移植を受けたこと、自分は何も知らなかったことを知る。葉月の周囲の人間関係が悪すぎて(特に職場)、全て主人公をイライラさせるために配置されてるんじゃないかと思うくらい。医者の出世は大変。なぜタイトルが『感染』なのかが分かってから、話が一気に来る。誰がサンプルを元に戻したのかとか、全てをスッキリ説明し切れていない気はするが、最後は面白かった。
読了日:08月03日 著者:仙川 環

羆嵐 (新潮文庫)羆嵐 (新潮文庫)感想
松山の紀伊国屋で購入、一日で読了。私は帰省中に何を読んでいるのだ。大正4(1915)年に北海道で羆が村を襲った三毛別羆事件をモデルにした作品(wikipediaで調べた限り、多少変えてはある模様)。力仕事で男衆が不在の中、一軒の妻子が襲われ、妻は引き摺り去られる。最初の犠牲者が出た日こそ12月9日と書いてあるが、あとは今が何日なのかも判らぬような緊迫感。他村から呼んだ羆撃ちの名人・銀四郎の複雑な人間性。銀四郎が羆と対峙する場面が美しい。終わってみれば、過ぎた日数は思ったより短いが、とにかく恐ろしい数日間。
読了日:08月10日 著者:吉村 昭

ジャンヌ=ダルクの百年戦争 (新・人と歴史 拡大版)ジャンヌ=ダルクの百年戦争 (新・人と歴史 拡大版)感想
ジャンヌの出番は約半分、ジャンヌ個人の人生や業績を詳しく知りたい場合は他書へ。本書は、ジャンヌ出現に至るまでの百年戦争後半の歴史、特にブルゴーニュ家に詳しい。オルレアン派と、ブルゴーニュ派の間の勢力争いだけでなく。シャルル五世が整備した王家の金庫を預かる高級官僚「マルムーゼ」の系譜が、第三勢力として時局に影響。ド=ラ=トレモイユ、“ランス戴冠後のシャルル七世とジャンヌを離間させようとする文官”の悪人イメージが強いが、そういう流れの人物だったのか。著者が訳した『パリの住人の日記』、凄く欲しいが高いんだよな。
読了日:08月11日 著者:堀越 孝一

再発 (小学館文庫)再発 (小学館文庫)感想
父が急逝して北陸の医院を継いだ成田真澄。ベテラン看護師や患者は父と比較し、母は東京から戻った娘に見合いを用意。閉塞感。7歳の従妹が原因不明の病で死亡、その友人も。症状が、国内では撲滅したはずの狂犬病に似ていることが明らかになる。港に入る外国船から持ち込まれたのか? この著者の医療物は一定の水準は必ず超えるので、安心して読めるが、裏表紙あらすじの「パニックサスペンス大作」は過大かな。面倒臭い女(主人公ではない)が超絶面倒臭いが、恋愛沙汰が主原因でやらかしたわけではないことだけは良かった。あと母親も面倒臭い。
読了日:08月12日 著者:仙川 環

霧の旅 唐津の殺人 (ノン・ポシェット)霧の旅 唐津の殺人 (ノン・ポシェット)感想
江の島の高級マンションで刺殺された、女癖の悪い社長。現場で目撃された愛人は、一週間後に唐津で死体で発見。ルポライター浦上は、別の愛人に疑いを持つ。時刻表でのアリバイ崩しに特化した話。被害者は殺されるくらい酷い奴だったんだ、的な描写は一応あるが、被害者の人間性も犯人の人間性も全く印象に残らない。主人公が警察ならば逮捕後の聴取で直接の動機を聞く機会もあるが、フリー記者だとそうもいかないだろうし。むしろ、犯人が過去に関係した事件のほうが、心理的背景の描写がよほど詳しいのでは。唐津城は行ったことあるので懐かしい。
読了日:08月12日 著者:津村 秀介

刑事のはらわた (講談社文庫)刑事のはらわた (講談社文庫)感想
所轄署刑事から本部へ抜擢された八神の勤務先は鑑識課。この著者は初だが、「変わった物を読んだなぁ」という印象。現場で鑑識、解剖、鑑識、解剖。司法解剖にはやたら詳しくなれる(グロ描写苦手な人は読めない)。本の冒頭でメインの事件が提示されて追いかける構成の話ではないので、ミステリというより、一人の警察官が慣れない職場で神経すり減らしておかしくなっていく過程を読んでいるような気分。意外な展開で、面白くはあったけれど。最後、八神は実際に金塊は欲しかったのかなぁ。単に謎の解明に取りつかれていたんだと思ってたんだけど。
読了日:08月12日 著者:首藤 瓜於

衆 1968 夏 (文春文庫)衆 1968 夏 (文春文庫)感想
政治学の教授として、かつて大学紛争に参加した母校に戻った鹿野。教え子で市議会議員の石川に、68年の事件の調査協力を要請する。読了後の違和感、解説を読んで理由がわかった。〈団塊の世代の頭の中は、まったく理解不能でしたし、書き終えた今も、実は分かっていないと思います。〉藤原伊織『テロリストのパラソル』の「私達は世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ」という台詞を思い出したが、本書は鹿野と石川交互の視点で書いてるようで、最後まで、鹿野は個人でなく“下の世代から見て理解できない世代”のままなんだと思う。
読了日:08月13日 著者:堂場 瞬一

策謀  (警視庁追跡捜査係)策謀  (警視庁追跡捜査係)感想
シリーズ2巻。5年前の渋谷の殺人事件で国際手配されていた、元政治家秘書・船田が突如帰国した。逮捕されて西川が取り調べるが、黙秘を崩せず苦戦。一方沖田は、5年前の同じ日に起きた渋谷のビル放火を調べていたが。同じ事件を調べているわけでもないのに、いざ顔を合わせると以心伝心で、最後には揃って事件解決する名コンビいいなぁ。名コンビと言われると二人とも否定するが(笑)。私がもともと古い事件を掘り起こす話が好きなのも相まって、このシリーズいいわー。船田の人生は気の毒だが、警察がきちんと調べて自分から喋らせるのが良い。
読了日:08月14日 著者:堂場瞬一

放火 (角川文庫)放火 (角川文庫)感想
風俗店と消費者金融が入居する池袋の雑居ビルで火災。何故か本庁四課が仕切る捜査本部に、本庁一課火災班の黒田は疑問を感じる。この著者初読み。二冊連続で雑居ビルに放火だと、脳内で事件が混ざるな(苦笑)。あっちは渋谷だったけれど。この本、タイトルの割にあまり放火の話ではないというか、放火事件の解決そっちのけで警察内の不祥事暴きとか、被害者の保険金の取り合いとかが進む。少なくとも警察は変な駆け引きしてないで、とにかく本件を最優先で捜査してほしいと思う。あと女性新聞記者の企画とか黒田との微妙な恋愛未満はいらない……。
読了日:08月14日 著者:久間 十義

牽制 - 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)牽制 - 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)感想
シリーズ8巻。1月、ドラフト1位で入団直前の高校球児・花井翔太と、拳銃を持ったままの若手警官が失踪。警官捜索に人手が割かれる中、高城は花井の高校へ。ガールフレンドも家出中らしい。また、高校に野球賭博の噂が? 高城が酒飲んでない、凄い! と思ってご免なさい、車であちこち行くから控えているらしい。高校生が周囲の迷惑まで考えが及ばないのは仕方ないとして、悪いのは監督だろうコレ……。10巻(最終巻)既読なもので、成程この展開はここから始まるのかと。順番に来てたら、この最後の一文は、次の巻読まずにいられないだろう。
読了日:08月16日 著者:堂場 瞬一

疑装―刑事・鳴沢了 (中公文庫)疑装―刑事・鳴沢了 (中公文庫)感想
八王子で保護された何も喋らない少年が、病院から姿を消した。少年の父は日系ブラジル人で、轢き逃げ死亡事故犯として国外脱出。鳴沢が向かった少年の地元の町は、日系ブラジル人たちの間で緊張が高まっていた。鳴沢シリーズは最終作のみ既読、これは一つ前かな。鳴沢本人は無自覚だろうが、過度に自制的な人物の一人称で書かれているので、事件が動き出すまでは読み進めるのに苦労するというか、エネルギーが必要。周囲の人間は、終始彼に怠惰を指摘されている気分で苛立つんだと思う。所轄署は事故をもっとちゃんと捜査する必要があったわけだが。
読了日:08月17日 著者:堂場 瞬一

凍る炎 アナザーフェイス 5 (文春文庫)凍る炎 アナザーフェイス 5 (文春文庫)感想
窃盗団の張り込みと、メタンハイドレード研究施設の殺人事件、現場を梯子させられる大友。捜査中、自分が尾行されていることに気づく。メタン外されて太陽光プロジェクトに回された研究者、多分畑違いだろうに研究可能なのか気になって仕方がない。大なり小なり怪我人の多い巻で、警察官は危険な職業なんだ、と改めて思う。大友、どの時点の何が原因で見張られるようになったか不明だが、警察は過去の事件で恨み買ってる可能性もあるからなぁ。ラスト、6巻既読なもので、成程これかと。6巻では全部済んでたから、この直接の続きは追跡捜査係かー。
読了日:08月17日 著者:堂場 瞬一

犯罪小説家 (双葉文庫)犯罪小説家 (双葉文庫)感想
この作者、1冊くらい読んだことあるかと思ったら、初らしい。新進作家・待居涼司の『凍て鶴』が映画化されることに。監督・脚本・主演することになった小野川充は、数年前の、自殺サイト〔落花の会〕主催者の美しい死のイメージを映画に持ち込もうとする。ネット心中に詳しいライター今泉千里は、小野川の依頼で〔落花の会〕を再調査。小野川、天才なんだろうけど変人なので、実際に身近にいたら嫌だろうな(苦笑)。しかし、最終的には「こいつが撮る映画を見たい」と思ってしまう説得力。……待居と小野川は満足だろうが、今泉が一人だけ気の毒。
読了日:08月17日 著者:雫井 脩介

函館五稜郭の闇 (ケイブンシャ文庫)函館五稜郭の闇 (ケイブンシャ文庫)感想
カメラマン来栖は、立待岬から男が海に転落するところを目撃した。しかし、その男の服毒死体が、函館山中の碧血碑(箱館戦争の旧幕府軍の死者の慰霊碑)前で発見されて? 序章を読んだ時点で、コレ私の好きじゃない文章だとは思ったんだ(苦笑)。大量にもらった文庫本の中の1冊だったからまだよいが、自分で1円でもお金出してたら、読了後に「畜生!」ってブン投げてると思う。腹が立つほど面白くない本は久しぶりだ。警察の邪魔する素人探偵も腹立つけど、素人に先を越されるほど仕事の遅い警察にも腹が立つ。函館の観光地の名前だけは覚えた。
読了日:08月18日 著者:長井 彬

宿命 (講談社文庫)宿命 (講談社文庫)感想
病死した前社長の四十九日後に、遺品のボウガンで現社長が殺される。前社長の長男・晃彦は、和倉刑事の小学校~高校の同級生で、晃彦の妻・美佐子は和倉のかつての恋人だった。やはり刑事だった和倉の父が追っていた、レンガ病院で死んだサナエの謎。見えない糸に操られるような美佐子の半生。半分くらい読んで気付く、これ十数年前に既読だ(苦笑)。現在の事件の犯人やトリックは全く記憶にないが、殺さざるを得なかった背後の事情は覚えてた。本書と『時生』『分身』程度の狭い範囲で物を言うが、ラストシーンが非常に印象的な作家だなぁと思う。
読了日:08月19日 著者:東野 圭吾

蒼い記憶 (文春文庫)蒼い記憶 (文春文庫)感想
『緋い記憶』既読。記憶にまつわるホラー短篇集。12篇もあると自分の好みがはっきり解る。“超常要素ゼロ。幼時の記憶が数十年後にふと蘇ると、当時は理解できなかった犯罪の真相に気付く”話が大好きで、自転車のトラウマ『棄てた記憶』がダントツ、次にお手伝いさんの思い出『夏の記憶』。『幽かな記憶』は若干オカルトだが、古い電話帳や住宅地図で昔の家を探す過程が好き。事件性皆無だが、大学時代の小説同人仲間『嘘の記憶』も割と気に入った。……私にとっては、“ホラー”である必要性、全くないんだな(苦笑)。要求はむしろミステリか。
読了日:08月19日 著者:高橋 克彦

わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑感想
職場の方が、娘に、とくださった本を親が読む(笑)。絶滅理由は1地球のせい、2ほかの生き物のせい、3人間のせい。〈今、地球上にいる生き物はたまたま生き残ってここにいる。逆にいうと、絶滅した生き物は、たまたまほろんでしまっただけ。〉酸素がたりなくて絶滅(デボン紀、地上の巨大植物が枯れて海に流入、植物プランクトン大発生で他生物が窒息)で、前に読んだ地学系新書の無酸素事変って奴か! と思って新書読み返したら違った(苦笑)。海洋無酸素事変は白亜紀の巨大火山噴火。コレと地学系の本とか娘の古生物の図鑑とか読み比べよう。
読了日:08月31日 著者:丸山 貴史

ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき (電撃文庫)ブギーポップ・オールマイティ ディジーがリジーを想うとき (電撃文庫)感想
表紙のブギーが妙に可愛いなと、本編に全く関係ないことを最初に思う(笑)。時系列的には『VSイマジネーター』直後。スプーキーEの死の真相を調査しに来たポリモーグと、無気力な少年・乙坂了哉と、織機綺が出会う。スプーキーE、死んでるのに出番多いな! ポリモーグ、名前は覚えてたが能力忘れてた。スプーキーE、ポリモーグ、ディジー・ミス・リジーは同タイプの能力。スプーキーEが綺を殴ってたけど、電撃で操らなかった理由には納得。このあと綺が料理学校に通うことになるきっかけはこれかぁ。話の隙間を拾って穴を埋めるのが上手い。
読了日:08月31日 著者:上遠野 浩平


読書メーター

拍手[0回]

PR
【2019/09/01 11:48 】 | 本関係 | コメント(0)
<<【小話】代用 | ホーム | 【小話】質問>>
コメント
コメント投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>