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【感想】夢界異邦人 眠り姫の卵
夢界異邦人 眠り姫の卵  水落晴美『夢界異邦人 眠り姫の卵』(電撃文庫)。

 何もかも忘れて眠ろう。
 目を閉じて、手足を丸めて、深い幻想の中に落ちよう。
 そして、チョコレートのように甘い甘い夢を見るの――


 上の言葉を見た瞬間、買うことを決意した本です。
 “このままずっと眠り続けて、目覚めなければいいのに”と思ったことは私にもなくはありませんが、それを「チョコレートのように甘い夢」と形容することは、私には思いつかなかった。

 二年もの間眠り続ける少女さとみを目覚めさせるために、彼女の“夢界”に侵入した凛。彼を待っていたのは、霧に包まれた白い街。地上を追われた洞人たち。六年の一度の神現しの儀式と、狩られる鬼。そして、チョコレートの死体……。少女の夢の中に広がる世界がとても素晴らしくて、この世界の中だけでも一つの物語として確立するんじゃないかと思ったくらいでした。
 ただ、心を閉ざした少女を治療する、という話の目的上仕方ないのかも知れませんが、いくら夢界がさとみの現実世界を反映していると言っても、あまり何もかも現実と結びつけて説明されると、ちょっとね。治療が成功してさとみが目覚めたあとだって、「そんなに世の中うまくいくか?」とか思っちゃったし。まあ、コレは私がひねくれているだけかもしれませんが。
 むしろ私は、夢界の中で少女ナナを執拗に殺そうと迫る街の狩猟官長、街を護るためでなく自分の愉悦のために獲物を狩る彼のような人物が、さとみの心のどんな部分から産み出されたのだろう、なんてことに一番興味があったりします。
 凛や、同業者の紅美(美人!)の次の物語には、きっといつか出会えることでしょう。それはとても楽しみです。けれども、さとみが目覚めた今、彼女の夢界の中にいたナナやシンたちは一体どうしているのでしょうか……?

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【2001/01/05 23:50 】 | 感想電撃文庫 | コメント(0)
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