忍者ブログ
2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:4613ページ
ナイス数:612ナイス

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)感想
革命前(1930年代?)の英国の状態を想像できず、とりあえず森薫『エマ』(1890年代)の格差社会をイメージしたが、古過ぎるだろうな。途中から、どうすればこの体制を破壊できるか考えながら読んでいた。戦争の目的上、ブラッドベリ『華氏451度』みたいに他国の攻撃で現体制が崩壊することも期待できない。語彙を削減することによって反体制的な思考を不可能にするというのは、脳の中すら自分の自由にならないということで、絶えず監視されていることより怖かった。「オレンジあるよ」や「大きな栗の木の下で」の歌が印象的。
読了日:12月4日 著者:ジョージ・オーウェル

華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106)華氏451度 (ハヤカワ文庫 NV 106)感想
再読。ブラッドベリの文章は情緒的すぎて、『たんぽぽのお酒』的な内容だと吉と出るが、本書は読み始めに苦労する。壁を超えれば、一気にのめり込むのだけれど。少女クラリスが、登場シーンは少ないのに魅力的。巻末で福島正実氏は〈人間の未来に対するペシミズム〉と述べるが、オーウェル『一九八四年』の徹底的な救いの無さを読んだ後だと、ブラッドベリはまだ人間性に対する最後の希望を捨てていない気がする。本を焼く未来の中でも、必ず一握りのモンターグが現れるのだと。エンデ『モモ』を再読したくなった。ビーティ署長は灰色の男なんだな。
読了日:12月7日 著者:レイ・ブラッドベリ

戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)感想
再読。アニメ誌のOVA記事で関心を持ち購入(『グッドラック』読後にOVA視聴、クーリィ准将が格好いい)。〈友軍機を見殺しにしてでも帰投せよ〉という前情報から予想したほど、主人公・深井零は冷血ではなかった。協調性は皆無だが。人間は機械知性を使役して異星体ジャムと戦っていたつもりなのに、次第に機械知性の非情に直面する。天田少尉の悲劇。そして、零が信じた雪風が最後にとった行動。『グッドラック』発表前、続きが存在しない時期の雪風読者にとっては物凄く恐ろしい幕切れだったろうが、その戦慄を味わってみたかったとも思う。
読了日:12月10日 著者:神林 長平

グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)感想
再読。心身に重傷を負ったのち目覚めた深井零は、ブッカー大佐やリン・ジャクスン、軍医フォス大尉らと対話を重ね、自分と雪風とが別個の存在だと認めていく。人間が、自分たちが創り育てた戦闘知性体に一方的に排除されかねなかった前巻から一転。対ジャム戦略に人間の有用性を示すことで共闘可能となる展開は、人間VS知性体の戦いでもある。ジャムや情報軍との腹の探り合いも非常に刺激的。特殊戦の新人、フォスや桂城少尉は面白いキャラだが、癖のある部下ばかりまとめるブッカーは大変だな。最後は絶望的な戦況にも見えるが、零と雪風に期待。
読了日:12月11日 著者:神林 長平

おおきなかぶ (はじめてのめいさくしかけえほん)おおきなかぶ (はじめてのめいさくしかけえほん)感想
小児科待合室。二歳娘はまだ本文は読めないが、保育園の劇でおばあさん役を演じたばかりなので話は理解していて、絵を見ながら自分で「うんとこしょ、どっこいしょ、ぬけません」とエンドレス大きな蕪。
読了日:12月14日 著者:

永久帰還装置 (ソノラマ文庫)永久帰還装置 (ソノラマ文庫)感想
再読。小型宇宙機にて冬眠状態で火星に現れた謎の男・小鴨蓮角と、覚醒した彼を尋問する戦略情報局の女ケイ・ミン。神めいた敵が相手でも、情報局の面々は有能だ。事実は解釈によって成り立つ。情報局は事実を改変せず、編集する。相手が繰り出す言葉を聞くだけで自分の存在基盤が崩れていくような感覚は、さすが神林作品。だが(少なくとも私が読んだ範囲の)神林作品には珍しい、大人の直球ラブストーリー。幼少時に蓮角を捨てて出て行った母への思慕は、それから何年経っていようと切ない。ケイの飼い猫サヴァニンとの関係も。猫好きは読むべし。
読了日:12月16日 著者:神林 長平

金田一少年の事件簿 吸血鬼伝説殺人事件 (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3468巻))金田一少年の事件簿 吸血鬼伝説殺人事件 (講談社コミックス―Shonen magazine comics (3468巻))感想
内科待合室。最初、金田一が自転車旅行中で音信不通だったらしい。連載の最後で旅に出たのか? その辺は未読なので事情はよく分からないが、問題なく読めた。廃墟を利用したペンションで起きる連続殺人事件。特殊な人がいっぱい……。
読了日:12月17日 著者:さとう ふみや

金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(上) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3648巻))金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(上) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3648巻))感想
内科待合室。オペラ座館の第二の事件が思い出せないなぁ(この事件を読む分には必要ない)。新オーナーの女性が月影先生(『ガラスの仮面』)みたいな容姿だが、女優ではなく作曲家で残念。忘れていたが、美雪は演劇部だった。剣持警部行方不明。
読了日:12月17日 著者:さとう ふみや

金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(下) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3649巻))金田一少年の事件簿 オペラ座館・第三の殺人(下) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3649巻))感想
内科待合室。金田一少年のシリーズは、演劇関係者の事件が、登場人物にも事件自体にも華があって好きだな、と思う。しかし、第一の事件の頃から、この構造は存在していた筈だよね……?
読了日:12月17日 著者:さとう ふみや

金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件(上) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3755巻))金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件(上) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3755巻))感想
内科待合室。学習塾の合宿で起こる連続殺人事件。明智警視と地獄の傀儡師まで登場して、豪華な顔触れだ。明智警視が塾講師だったら勉強する。脳内で「L・O・V・E・ア・ケ・チ!」と今日一日中踊り狂っているバカは私です。
読了日:12月17日 著者:さとう ふみや

金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件(下) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3756巻))金田一少年の事件簿 獄門塾殺人事件(下) (講談社コミックス―SHONEN MAGAZINE COMICS (3756巻))感想
内科待合室。犯人にも殺人に至るだけの動機がある→殺された連中は極悪人→連中のせいで過去に死んだ、犯人の関係者は善人、といういつもの図式だが、過剰に善人だと却って人間味を感じないな、と初めて思った。高遠に操られる犯人を救いたい、という明智さんの心情吐露は好きだったんだけど。
読了日:12月17日 著者:さとう ふみや

金田一少年の事件簿 短編集(4) (講談社漫画文庫)金田一少年の事件簿 短編集(4) (講談社漫画文庫)感想
内科待合室。怪盗紳士の話は、金田一の中では珍しく人が死なないので、気楽に読める。女性警察官の話は、そんな簡単に銃を自宅に持って帰っていいのかよ! と思った。女医の話は、当人は笑えない状況だろうが傍目には笑える。古畑任三郎に追い詰められる犯人のほうが気の毒に見えてくる、みたいな状況だった。
読了日:12月20日 著者:さとう ふみや

四次元世界 (小学館文庫)四次元世界 (小学館文庫)感想
内科待合室。SF色の強い短篇集だが、似たテーマの話が多いので、一気読みには向かないかも。虫の擬人化で、蝉などの貧乏画家or漫画家の少年が、蝶などの美女に捨てられる。後に美女が復縁を望んだ際には、少年は既に筆を折って遠くに去っている、というパターン。絵の道で成功する話がない……。もう一つは、活力が失われた未来管理社会から、一組or数組のカップルが原始的な惑星へ旅立ち、野蛮だが活力溢れる生活を再び始める、というパターン。全編通して、儚げな美女がひたすらに美しい。何となく手塚治虫『火の鳥』を連想する一冊だった。
読了日:12月20日 著者:松本 零士

よだかの星 (宮沢賢治どうわえほん)よだかの星 (宮沢賢治どうわえほん)感想
遊学館。醜いというだけで、どこにも居場所のないよだかの物語。星になっても、よだかは孤独なままじゃないのか。絵ではよだかも綺麗。ラスト数ページの迫力は圧巻。
読了日:12月22日 著者:宮沢 賢治

月夜のでんしんばしら (日本の童話名作選)月夜のでんしんばしら (日本の童話名作選)感想
遊学館。電気総長は自慢したがりで偉そうだが、きちんと仕事はする。躍動感のある電信柱たちが楽しく、この絵でアニメーションで動くところを見たい感じ。
読了日:12月22日 著者:宮沢 賢治

魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA)魂の駆動体 (ハヤカワ文庫JA)感想
再読。車が完全自動化され運転が禁じられた近未来、老人ホームで〈私〉と子安は理想のクルマを設計する。自称画家先生やレイゴールド爺さんも含め、爺さんズが活き活き。こんな風に齢を重ねたいものだ。人類が滅んだ遠未来、翼人のキリアたちは、発掘された設計図を基にクルマを製作する。車の運転や機械工作が好きな人だとより楽しめるだろうが、分野は違えど“作る”趣味がある人なら気持ちはわかると思う。身体と意識と魂。老いて死ぬ前にこの本を読んだら、死ぬのが少し怖くなくなる気がする。猫が可愛いので猫好きは読むべし。
読了日:12月24日 著者:神林 長平

天文月報 2012年 12月号 [雑誌]天文月報 2012年 12月号 [雑誌]感想
『太陽系外惑星とその形成現場の直接観測』すばる望遠鏡のコロナグラフ機能の威力。『彗星状に見える小惑星たち』小惑星だが尾を引く「メインベルト彗星」の発見と活動メカニズム。『星空の砂金採り‐小惑星データベースの新時代‐』赤外線天文衛星「あかり」観測データから小惑星カタログAcua公開。『夢を叶える』自作超新星観測システムの変遷と発見の経緯、アマチュアの情熱凄い。『小惑星の詳細な測光観測』小惑星の自転周期や形状を解明。普段、私の本に関心を示さない夫がパラパラめくっている。珍しい。
読了日:12月30日 著者:


読書メーター

拍手[0回]

PR
【2013/01/07 01:01 】 | 本関係 | コメント(0)
<<【小話】大蕪4 | ホーム | 【小話】大蕪3>>
コメント
コメント投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>