貧乏旗本の三男坊であるらしい浪人が、老中の屋敷に闖入してきて言った。
「愚か者め、余の顔を見忘れたか!」 妙に偉そうな口を利く浪人の顔を、老中は凝視する。 「う、上様!」 老中は一旦ひれ伏したが、開き直って部下に命じた。 「こ奴、上様の名を騙る不届き者じゃ。斬れ!」 「騙ってなどおらぬぞ?」 「は?」 思いもよらぬ言葉に、その場で固まる老中。 「そちが勝手に『上様』と解釈しただけであろう」 「では、お主は何者じゃ?」 老中が問うと、浪人は答えた。 「通りすがりの物真似名人だ」 暫し沈黙ののち、老中は部下に命じた。 「こ奴、ただの愚か者じゃ。斬れ」 愚か者 / 愚か者2 PR |
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