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【感想】D‐ブリッジ・テープ
D‐ブリッジ・テープ  沙藤一樹『D‐ブリッジ・テープ』(角川ホラー文庫)。

 ゴミに埋もれたD‐ブリッジで、少年の死体が発見された。その傍らには、一本のカセットテープ。
 D‐ブリッジ・テープと名付けられたそれは再生され、そして彼は語り始める。
 ネンと呼ばれた片足の少年と、盲目の少女エリハの物語を。

 足の不自由な女の子と、彼女を背負う盲目の男の子……だったと思います。
 ミヒャエル・エンデ『ハーメルンの死の舞踏』で、ハーメルンの笛吹き男の物語の最後に子供たちが山の中に消えたとき、遅れて取り残されて、それゆえに全てを見届けて語り部の役となった二人の子供。
 もちろんこれとそれとは全然違う話ですし、D‐ブリッジのネンとエリハは死んでしまいます。けれども、全てを見届け、最後に何かを伝えるのはネンとエリハのような人間なのではないかと、私は思ってしまうのです。
 大人に捨てられ、ゴミの中に取り残されたネンやエリハの生活は、私などから見ればとても受け入れ難いものです。しかし、血まみれの手で捨てられたピアノを弾くエリハの姿には、血に赤く染まることで逆に高みに昇る何か、そんなものがあるような気がします。

〈どこを刺せば、この子は死ぬの?〉

〈あたしも、自分の手で殺したわ〉

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【2000/08/09 20:50 】 | 感想ホラー | コメント(0)
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