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【感想】キノの旅
キノの旅  時雨沢恵一『キノの旅 the Beautiful World』(電撃文庫)。

〈世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい〉

 人間キノと言葉を話す二輪車エルメスは、そんな世界の中を旅していく。

 この作品は短編連作になっていて、その中のいくつかを簡単に母親に話してみたところ、「西洋の昔話?」と言われました。確かにそんな雰囲気も、どこかにあります。
 一番そういう感じがするのが、第三話の「レールの上の三人の男」。短いけど、とてもいい味の出てるエピソードです。
 でも私が一番好きなのは、第五話の「大人の国」。主人公キノがかつて出会った旅人に、(またかとお思いかも知れませんが)エンデ『ハーメルンの死の舞踏』の笛吹き男を重ねてしまうのですよ。自分は傷付いても、子供たちを街の大人の手から救った笛吹き男に。
 「大人」とか「平和」とか「人の痛みが分かる」とか、そういうよく耳にはするけど誰も本当の意味なんかわかっていないような名前の国が、すごくうまいです。
 それはそれとして、読んでいると作者の時雨沢さんは銃器に詳しいような気がします。私には全く知識がないので、それがどの程度なのかは見当がつきませんが。軍の階級とか潜水艦の機能とかにとても詳しいらしい方の小説も読んだことがありますが、「何かにものすごく詳しい」というのは武器ですね、やっぱり。私には逆立してもそういう小説は書けません。
 でも私には私の得意分野がある“ハズ”なので、それを生かした物が書けるといいのでしょうが。宇宙物理の研究室にいる割には、そーゆー知識は書けるほどないし……反省。

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【2000/08/22 21:15 】 | 感想電撃文庫 | コメント(0)
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