人によって“SF”のイメージはいろいろあると思うが。
もし、天文学やロボットやコンピュータやバイオテクノロジーや、高度な理系の専門知識を有した人が出てきて、科学的に強固に裏打ちされたストーリーが展開されるような物を期待するなら、アーシュラ・K・ル・グィン 『言の葉の樹』(ハヤカワ文庫SF)は当てはまらない。今言った理系チックなのは私の認識では“ハードSF”という代物で、J・P・ホーガン『星を継ぐもの』(創元SF文庫)等が典型だと思うのだが、私この系統めちゃめちゃ大好きである。 一方、広大な宇宙空間を舞台に、異星人も出てきて、宇宙船で飛び回ってスペクタクルな戦闘を繰り広げるような物を期待するなら、やっぱり『言の葉の樹』は当てはまらない。宇宙戦闘メインなのを私は“スペースオペラ”と認識していて、見たことないのだが恐らく映画『スター・ウォーズ』等がその系統だと思う。 しかし、それでも『言の葉の樹』はSFなのである。何をもってして、私はコレをSFと認識するのか。
SFは、何らかの仮定に基づいた状況、極端な世界を描くのに便利だと思う。とある新技術が社会に与える影響とか。宇宙空間の戦闘というのも通常ないことだし。
『言の葉の樹』の場合、地球上で過去に起こり今後も起こり得る文化的・宗教的弾圧、書物を焼き寺院を壊し説法者を次々収容所に送り込む状況が、惑星アカ上で再現されている。それらを、自らも歴史的背景に持つ地球人サティの目で観察しているのだ。実際の歴史に囚われずに済む分、“その状況”を鮮明に描けるのではないか? 極端な状況設定なら“異世界ファンタジー”でもできるじゃないか、と言われそうだが……何だろう、ファンタジーって方向性が違う気がするんだよな(汗)。魔法やドラゴンが出てくるからとかじゃなくて、もっと根本的なところで。うーん、上手く言えん。 PR |
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