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【感想】第61魔法分隊
第61魔法分隊  伊都工平『第61魔法分隊』(電撃文庫)。

 王都からのどかな田舎町の第61魔法分隊に左遷されてきた一等契法士、ロギューネ・リーベルタ。
 彼を待っていたのは、同じ分隊員でお嬢さまの美人シュナーナに求愛しては相手にされない毎日と、シュナの妹デリエルとの喧嘩、それ以外は特に何ということもない平穏な日々……というわけには、いかなかった。
 その町自体が抱える秘密。それが、彼らを戦いの中心へと巻き込んでいく――。

 お調子者のロギューネ君が左遷されて辺境の街へ副隊長としてやってくるオープニングには、紫堂恭子さんの漫画『辺境警備』のサウル・カダフ隊長さん(こっちは隊長)を思い出しました。
 いいんですよ、ロギューネ君のイマイチ信の置けない言動が実に(笑)。私の小説『遺跡大陸』のアルベルトのイメージが見事に具現化されてる感じで。へらへらした言動が実は外見だけで本当は辛い過去を抱えているとか、魔法の実力には申し分のないところまでアルベルトそのものなのです(ああ、早く書かなきゃ『遺跡大陸』)。
 「契法士」「魔導器」「法力障壁」等々、この物語の世界観の中での用語が結構多いので、それに慣れるまで魔法の説明が頭に入ってこないのがちょっと難でしたが、ロギューネ、シュナ、デリエル、隊長のニルスに従兄妹のキキノと謎の生物(笑)といった隊員たちのキャラが全部すっとばしてくれました。辺境の町での、穏やかな勤務……しかし、それも長くは続かない。彼らは、それぞれの過去に直面せざるを得なくなっていくのです。
 私の最愛のキャラ、デリエル・グリックシュテン嬢。自分とは何者なのか。誰しも考えたことのある問いだろうけれど、彼女以上に切実にその問いの意味を考える人はいないでしょう。自分が、誰でもない自分であることの証明。

「ホントは私、家事とか好きだし、結構料理も得意なんだ」

「……本当はね」
「私もあなたのことが、好きだった」


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【2002/01/01 21:00 】 | 感想電撃文庫 | コメント(0)
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