岩本隆雄『星虫』(ソノラマ文庫)。
それは、ほんの少しだけ、未来の物語。 わずか三年前、日本の山中で約五千年前に落下したと思われる宇宙船が発見され、全世界が宇宙を夢見た、そんな時代―― 氷室友美、十六歳。夢は、スペースシャトルのパイロット。その夢を笑わずに真面目に聞いてくれた不思議なおじさんとの出逢い以来、体を鍛えるための毎夜のランニングを欠かしたことはない。 その友美の前に降り注いだ流星雨――それは、何と宇宙生物だった! 全世界の人々の額に貼りついたそれは“星虫”と命名され、人間の感覚を鋭敏化させ、拒絶するもの、歓迎するもの、全世界を騒動の渦に巻き込んでいく。その中で、友美の星虫は……。
宇宙を夢見る全ての人々に、問答無用で「読め!」と奨めたい、そんな作品です。
思えば私は中学生の時に、NHKスペシャルの『銀河宇宙オデッセイ』を見て以来天文をやりたかったのですが、友美ほど真剣に夢を追いかけていただろうか……ちょっと反省(^^;。かぁなぁり回り道はしましたが、今やっとスタート地点には立てたのですけれどね。頑張って修士論文書かなきゃ、くぅ。 しかし、この話を読んで思うことは、人間ってつくづく勝手だなあ、と。星降りから一日目、二日目、と、人間にとって都合がいいか悪いかだけで、ころころと全世界の星虫に対する態度が変わっていく。一貫して星虫を受け入れる姿勢を貫く友美の強さは、自分も星虫も生物として同等と認めているからなんですよね。周囲の大人たちに星虫をとるよう迫られても、しまいには自らの死にすら直面しても……。 そして、そんな状況でも宇宙飛行士を目指すことを決してやめない友美。 夢は、見るものじゃない。 叶えるためにあるのだから。 PR |
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