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2018年5月の読書メーター
読んだ本の数:23
読んだページ数:9391
ナイス数:633


残穢 (新潮文庫)残穢 (新潮文庫)感想
転居したばかりのマンションの部屋で、変な音が聞こえる。読者の久保から怪談の手紙を貰ったホラー作家が、久保と謎を追う。ホラーの筈だけど、怖がる暇ないくらいめちゃくちゃ面白かった! 語られる事象は怪談的だが、作家が妙に現実的で冷静。マンションは事故物件ではないのに、他の部屋や、隣接した分譲団地にも、人がいつかない家がある。マンションと団地の土地には以前、何があったか。バブル期、高度成長期。古老に話を聞いたり住宅地図を調べたりして、地域の歴史をどんどん遡っていくのがもう、楽しくって楽しくって。こういうの大好き。
読了日:05月03日 著者:小野 不由美

賞の柩 (集英社文庫)賞の柩 (集英社文庫)感想
96年の本の再文庫化。1頁目の描写で、コレ大濠公園だなと。著者プロフィールに九大医学部と書かれていて納得。ノーベル医学・生理学賞を受賞したアーサー・ヒル。津田医師の恩師・清原教授も同分野トップの一人だったが、三年前に病死していた。津田がヒル周囲の疑惑を追及。ガチ医療知識で解明するタイプの話ではないので、裏表紙あらすじの「本格医療サスペンス」という表現は違うかな(もっと専門的に振り切った話を期待した)。医学界を主舞台とした人間ドラマ。ヒルの同化母子関係。人生狂った若手研究者。論文剽窃は、医学界に限らず怖い。
読了日:05月03日 著者:帚木 蓬生

極卵 (小学館文庫)極卵 (小学館文庫)感想
14年の単行本の文庫化。元新聞記者のフリーライター瀬島桐子が取材した、自然食品店で1個250円の高級卵を買った客に食中毒発生、死者も。汚染はどこから? 原因究明より、生産者を吊し上げて「謝罪」させたいマスコミ。マッチポンプ記者。意識高い店員と主婦ブロガー。食の安全の為なら方法を問わない過激な消費者団体。手口はともかく怪しい人物は途中で見当つくものの、面白かった。胸糞悪い登場人物が多い中、朴訥な生産者、桐子の取材姿勢は好感。全面解決ではないが、ラスト溜飲下がって良かった。でも私、250円は買わない(苦笑)。
読了日:05月04日 著者:仙川 環

疑医 (小学館文庫)疑医 (小学館文庫)感想
「脳卒中は手術するな」自然療法を主張する香山医師。新聞記者・速水絵里子が書いた肯定的な記事が紙面を飾った後、ネットに香山式治療で死者が出たとの書き込みが。記事の責任を問う声。医師の著書タイトルがセンセーショナル(『死にたくなければ、薬も手術もおやめなさい』)な時点で最初から胡散臭いので、主人公に全く共感できず読むのツラかった……。論文もなく生データも見せないってのは、誰も検証できないということ。怪しくても言い方が上手なら人は信じる。正論でも言い方が下手なら受け入れられない。を1冊の中で大量に見た気がする。
読了日:05月04日 著者:仙川 環

模倣の殺意 (創元推理文庫)模倣の殺意 (創元推理文庫)感想
名前も初めて知った作家だが、09年没なのでもう亡くなってる。初版72年の本の改訂。推理小説の新人賞作家・坂井正夫が服毒死、警察は自殺と処理。医学書系編集者の中田秋子と、推理同人仲間の津久見伸助が、それぞれ調査する。「読者への挑戦状」付。裏表紙で鮎川哲也が「クリスティの初期のある傑作を思いうかべ」たと評してるクリスティ作品(即ちトリック)は見当ついた状態で読んでるのに、やっぱりトリック見抜けなかった(笑)。最初から読み返すと、いろいろ成程と思う。本筋に関係ないが、青酸カリをどこから入手したか非常に気になる。
読了日:05月04日 著者:中町 信

電磁波とはなにか―見えない波を見るために (ブルーバックス)電磁波とはなにか―見えない波を見るために (ブルーバックス)感想
職場本棚。84年刊。某社の入社試験で「一本の電線に電流が流れたとき、この電線から電波が放射されることを中学生にもわかるように簡単に説明しなさい」という問題が出た。著者曰く「この解答をするまでにすでに百数十ページを費やしているが、それでも中学生が理解してくれるかどうか」。同著者の『アンテナの科学』面白かったので読んだが、これは難しい。要熟読。無線通信や光ファイバなど、実用例は楽しいんだけど、7割方理論だから、数式多目。「電気力線と磁力線を、頭のなかに描けるようになれば、目に見えない電磁波が“見えてくる”」。
読了日:05月05日 著者:後藤 尚久

硝子のハンマー (角川文庫)硝子のハンマー (角川文庫)感想
貴志作品『黒い家』しか読んでなかったことに気付き、我ながら意外。本書は日本推理作家協会賞受賞作。厳重なセキュリティを誇るオフィスビル最上階で、社長が殺された。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径が密室の謎に挑む。見取図出てくるとワクワクするよね! 榎本のセキュリティ突破テク凄い。どうしてもそこに入らねばならない強い理由がない限り、面倒なら泥棒は他所に行く。犯行に使用した物、使い得た人物は見当ついたが、実際どう使って殺害したかは明かされるまで解らず。経歴上、犯人が技術持ちなのは納得だが、超頭いいな。
読了日:05月06日 著者:貴志 祐介

QED 百人一首の呪 (講談社文庫)QED 百人一首の呪 (講談社文庫)感想
メフィスト賞受賞作。百人一首マニアの社長が殺された。薬剤師・桑原崇が百人一首の考察ついでに事件の謎を解く。藤原定家がそんなことを考えていた、というのはありそうで非常に面白いけど、この本、人が死ぬ必要すらなかったんじゃないか(笑)。百人一首の考察繋がりで解るのが被害者の心理じゃなく加害者側だったら、もう少し事件と絡みがあったかも。解説者の〈恋人の素性はどうでもよくてとにかくラブレターを書く行為が楽しいみたいな本末転倒こそが、しかし本格ミステリという特殊ジャンルを推進する〉という表現に笑いつつ、何か納得した。
読了日:05月06日 著者:高田 崇史

QED 六歌仙の暗号 (講談社文庫)QED 六歌仙の暗号 (講談社文庫)感想
七福神を卒論テーマに選んだ斎藤貴子。三人変死したことで、文学部で七福神はタブー視されていた。大学の先輩である桑原崇・棚旗奈々と京都七福神巡りへ。途中から、六歌仙の謎に繋がっていく。シリーズ2作目、前作より面白かった。薬剤師であることがストーリーの役に立ってたし、桑原の蘊蓄を全部聞いたことが、きちんと犯人の動機解明に結びつくから。他人には理解しづらいことでも、そう信じている人は自身の原理に従って動く。謎解き部分、奈々と貴子の台詞に「!」付きすぎ、と思った(笑)。この七福神コースで、京都巡りに行きたくなるね。
読了日:05月06日 著者:高田 崇史

感染遊戯 (光文社文庫)感染遊戯 (光文社文庫)感想
この著者初読みなんだけど、「姫川玲子シリーズ」スピンオフらしい(苦笑)。わからない過去情報がちょいちょい。『感染遊戯』ガンテツこと勝俣が15年前捜査した、元厚生官僚の息子が殺された事件。『連鎖誘導』倉田が警察辞める直前に関わった、外務官僚殺人未遂。『沈黙怨嗟』葉山が担当した、老人同士の傷害事件。『推定有罪』官僚ばかりを被害者とする事件が、繋がる。直接恨みがある人はまだしも、歪んだ正義感で天誅した気分になるのは違うだろう。警察がちゃんと仕事して事件解決する話は安心するね。ガンテツはヤバい方法も使ってるけど。
読了日:05月06日 著者:誉田 哲也

警察庁から来た男 (ハルキ文庫)警察庁から来た男 (ハルキ文庫)感想
北海道警察本部に警察庁から監察官が来た。道警の津久井に協力要請する。という裏表紙あらすじから藤川監察官メインの話と思って読み始めたが、現地の津久井、佐伯刑事らの視点だった。前作『笑う警官』(未読)の面々らしい。単体でも面白かったが、コレは前作読んどいたほうがいい話だね。風俗店に売られたタイ人少女、ぼったくりバーの客の転落死、他に一つ一つは小さい不祥事の数々。どうやら生活安全部全般に問題があるようだが、不祥事間の関連が見えない。暴力団と警察の癒着? 不祥事関係者の共通項が判明してからの畳み掛けは圧巻だった。
読了日:05月11日 著者:佐々木 譲

代官山コールドケース (文春文庫)代官山コールドケース (文春文庫)感想
被疑者死亡で解決した筈の、17年前の暴行殺人の遺留品と同じDNAが、川崎の事件現場で出た。警視庁の面子をかけて再捜査を命じられた、特命捜査対策室の水戸部。しかし要員は彼と朝香の二人。シリーズ2作目らしいが単体で面白い。古い事件の掘り起こしで当時の空気感や、昔(同潤会アパート)~今の代官山の変貌が描かれるのが良かった。事件は95年4月、警察庁長官狙撃の直後。オウムで警察が忙殺されていた時期。今回が超スピード解決なのは、時間が経ったことで口を開いた証言者、それを引き出した朝香、遺留品分析技術の進化のおかげか。
読了日:05月12日 著者:佐々木 譲

主よ、永遠の休息を (実業之日本社文庫)主よ、永遠の休息を (実業之日本社文庫)感想
読了後、何故このタイトルなんだろうと考えている。通信社の記者・鶴田吉郎。偶然コンビニ強盗逮捕をスクープしたことがきっかけで、暴力団事務所の盗難、14年前の女児誘拐殺人と調査が繋がっていく。ネットに流れる“14年前の実録映像”は本物か、だとしたらなぜ今頃? 取材する側だった筈なのに、だんだん関係者の一人に肩入れしていくことで生じる苦悩。事件終結後に、書けるのかと悩む鶴田に、キャップがかけた言葉がいい。何かを取り繕おうとすると、後に無理が出る。今更修正できないけど、14年前の時点でどうしておけばよかったのか。
読了日:05月12日 著者:誉田 哲也

誘拐児 (講談社文庫)誘拐児 (講談社文庫)感想
乱歩賞受賞作。終戦翌夏に起きた5歳男児の誘拐。闇市の混乱で身代金は奪われ、しかも拐われた子供は見つからなかった。15年後、家政婦殺人事件を捜査する警察。その頃、谷口良雄は、女手一つで育ててくれた母が病死直前に遺した言葉に、疑惑を感じていた。良雄と恋人で看護婦の幸子、刑事2組の調査が絡み合う。刑事2組の個性の違いが判別できないものの、現在を追う側・過去を追う側程度で把握。読者の私は勿論、昭和36年の若者にとっても、戦時中の疎開や終戦直後の闇市などは別世界のような状況だが、当時の雰囲気が伝わってくるのが良い。
読了日:05月13日 著者:翔田 寛

白砂 (双葉文庫)白砂 (双葉文庫)感想
殺された高村小夜は、大学進学費を貯めるため、質素にバイト生活していた。両親は既に亡く、家出同然に出てきた故郷に住む祖母は遺骨引き取りを拒む。小夜は故郷を詠んだ短歌で賞を獲っていた。心の流れの解明を重視する目黒刑事の捜査。被害者の幸薄い人生に完全に焦点を当てた話かと思いきや、犯人逮捕から自供までが案外長い。口を割らせるには犯人の過去を知り、心理に寄り添う必要があるが、それには尺が足りず急展開な気がする。だったら逆にもっと早く逮捕して、半分くらい動機解明パートでも良いかも。不幸自慢、と評した昔の知人は超的確。
読了日:05月13日 著者:鏑木 蓮

漂泊―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)漂泊―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)感想
ビル火災の巻き添えで明神刑事が負傷。火災の死者二人のうち一人の身元が判明せず、失踪課が調査に当たる。捜索願の出ている売れっ子ミステリ作家か? この著者初読み&シリーズ4作目だが、失踪課設立の本音と建前が説明されているので、分室No.2高城含め、ワケありメンバーが集まり易い事情は解る。メンバー間の距離感の(以前との)変化、は流石に無理だけど。登場人物に作家・編集者が多いので、受賞後の作家の2作目の苦悩とか、作風の転換、純文学とエンタメ、書きたい物と売れる物の違い、どこからが盗作かとかが真に迫っていて面白い。
読了日:05月17日 著者:堂場 瞬一

裂壊―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)裂壊―警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)感想
年2回の失踪課課長査察が高城ら三方面分室に入る三日前、阿比留室長が姿を消した。課長は分室を潰したがっている。室長不在を隠し、密かに捜索する分室員たち。ただでさえ時間がないのに、女子大生失踪の捜索願も飛び込んできて。シリーズ5作目だが、私は4作目のみ既読。室長を捜そうにも私生活を全く知らなかった高城らが、家族関係や過去の経歴を暴いていくことに。かつて手掛けた少年事件。コレは、分室設立から今までの人間関係の蓄積(というか、全然蓄積されてないところ)がモロに絡む話なので、全巻既読のほうが面白かったんだろうなぁ。
読了日:05月18日 著者:堂場 瞬一

献心 - 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)献心 - 警視庁失踪課・高城賢吾 (中公文庫)感想
シリーズ10作目の最終巻。私は4、5作目のみ既読で、いつの間にやら分室メンバーが去ったり増えたり、身の上が大変化してたり。何より、12年前の高城の娘・綾奈の失踪事件が進展してる! 死体発見で捜査開始、だが。事件直前の綾奈を目撃したという新証言。当時小1の同級生全員に聞き込み。どうしても連絡が取れない一人の消息を追って、秋田、岩手へ。真実を隠蔽すると、関係者誰にとっても不幸な結果になるな……。父としての高城は一つの結末を得られたが、分室や長野ら、協力してくれた仲間たちが刑事として心残りがない形にして欲しい。
読了日:05月20日 著者:堂場 瞬一

長き雨の烙印 (中公文庫)長き雨の烙印 (中公文庫)感想
架空の地方都市・汐灘を舞台とするシリーズ第1段らしい。20年前に幼女殺人で逮捕され服役した庄司が再審請求準備中、同様の殺人未遂が発生。今度も庄司と決めつけて捜査するベテラン刑事に疑問を抱く、庄司の高校時代の友人・伊達刑事。功名心から再審支援する弁護士。昔の事件の被害者の父。寂れゆく町の閉塞感で全編重苦しい。証拠工作できた人物、何故このタイミングで再審請求かを考えれば昔の真犯人は推測つくし、今回も予想できなくもないが、全く救いのない話。弁護士が庄司と信頼関係築けていたら、最悪の事態だけでも避けられたろうか。
読了日:05月20日 著者:堂場 瞬一

敗者の嘘―アナザーフェイス〈2〉 (文春文庫)敗者の嘘―アナザーフェイス〈2〉 (文春文庫)感想
強盗放火殺人事件の容疑者自殺後、「自分が犯人だ」と弁護士が出頭してきて混乱する特捜本部。父子家庭で今は刑事の一線退いて総務課の大友が、お偉いさん肝煎りで送り込まれる。大友も押し付けられた仕事だが、そりゃ現場は反発するよね……。アナザーフェイス未読。失踪課最終巻に大友や高畑チラリと出てたけれど、失踪課の重厚さに比べるとノリが軽い本。警察物というより、無自覚イケメンのキャラ物ミステリ読んでる感じ。起きてること自体は大問題で、後味悪いんだけど。自殺した人も弁護士も特捜本部も、何というか浅はかな人が多い話だった。
読了日:05月20日 著者:堂場 瞬一

だれが宇宙を創ったか―はじめて学ぶ人のための宇宙論 (ブルーバックス)だれが宇宙を創ったか―はじめて学ぶ人のための宇宙論 (ブルーバックス)感想
職場本棚。原著78年+80年(カトリックの天文学者・ユダヤ宗教学者の寄稿)、邦訳86年。インフレーション理論(81年)より前なので、宇宙論を学ぶには古い。結果には必ず原因があるのが因果関係。しかし、「宇宙の始まり=ビッグバン」があるとしたら、それより前にはその原因がないことに。ビッグバン理論を受け入れ難かった学者らが、受け入れざるを得なくなる過程の科学史としては面白い。ヒューメイソンのスペクトル測定。カラー口絵で天体名がない写真、1は子持ち銀河M51だと思うが左右逆? 2がNGC891で5が魚口星雲かな。
読了日:05月26日 著者:ロバート ジャストロウ

Sの継承(上) (中公文庫)Sの継承(上) (中公文庫)感想
前橋の廃工場で発生した毒ガス事件の報に、警視庁捜査一課特殊班の峰脇らが向かう。現場で発見された白骨死体が気になる序章から一転、第一部の時代は60年安保後。デモでは国を変えられない。元軍人で会社社長の国重は、国を正すため無血クーデターを計画する。実際には一人も殺さない予定とはいえ、政府を脅す武器が必要。優秀な学生・松島に旧軍の毒ガス再現を託すが。グループができると派閥がわかれ、力を入手すると行使へと暴走し、そして東京五輪直前。政治家不要の直接民主制って実現無理とは思う。上巻ラストで、そういうことかと思った。
読了日:05月27日 著者:堂場 瞬一

Sの継承(下) (中公文庫)Sの継承(下) (中公文庫)感想
現代に戻った二部。毒ガス犯から警察へ電話、ネット掲示板へ書き込み。昔のクーデター計画が現代版にアップデートされて実行されていく。スレが盛り上がっていたのが、特定班に情報晒された瞬間に手の平返すのが凄い。昔の国重や松島は、もちろん社会に不満があるわけだが本気で変えたいと思っていたし、特に国重は犠牲を出したくなかった。「S」は不満ぶつけてるだけで他人大切にする気がないから、犠牲出すのに躊躇ないのかな。現代ならではの計画を現代ならではの手段で警察が引っくり返して追い詰めるのが良い。最後、そういうことかと思った。
読了日:05月27日 著者:堂場 瞬一


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【2018/06/03 08:58 】 | 本関係 | コメント(0)
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