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【感想】ユージニア
ユージニア  昔、恩田陸『ユージニア』(角川文庫)の感想は書いたのだが、再読して思ったことが幾つかある。

 昭和48年に金沢で起きた地元の名士・青澤家の大量殺人事件で、盲目の少女・緋紗子のみが生き残る。
 小学生のころ近所に住んでいて第一発見者となった雑賀満喜子が、大学4年の夏に事件関係者を取材し、それが『忘れられた祝祭』として出版された。
 さらに十数年後、また別の聞き手が、満喜子や関係者を取材して回るが――。

 ……この聞き手、異常に有能だと思う(汗)。
 満喜子は“昔の知人”“自分も関係者”という取材に有利な出発点に立っていて、何度も相手を訪ねて話を聞いて、やっと書けたのが『祝祭』だ。しかしこの聞き手は、殆どの話し手に対して赤の他人で、会うのも初めてだと思われる。なのによくこれだけ、綺麗事じゃない発言を引き出せたなぁ。

 以下ネタバレ注意。
 本の感想を短歌に詠む、というのが最近の私のマイブームである。
 ユージニアとは、青澤緋紗子と名も知らぬ青年が、二人で考えた国につけた名前だ。で、私が最初に詠んだ『ユージニア』はこれだった。

 友人と二人の国へ行きましょうそう願うのは罪なのですか

 が、何かが違う気がした。緋紗子の一番の願いは、これではない筈だ。

「贅沢なのかしら。一人きりになりたいと思うだなんて。でも、あたしは一人だけの国に行きたい。せめて、二人だけの国に」

 緋紗子は本来、一人になりたかった。それが叶わないから、次善として二人を望んだに過ぎない。彼女の望みを叶えてくれるのが青年だっただけで、“二人きりになること”も、“その相手が彼であること”も、彼女にとっては必須条件ではなかった筈だ。緋紗子と彼の関係は女王と家臣のようなもので、彼の献身を受け入れ応えてやるつもりはあっても、彼の死に彼女が動じることはなかった。二人で作ったユージニアは、実質、緋紗子一人の国なのだ。
 最終的に、私の短歌はこうなった。

 一人きり静かな国へ行きたいのそう願うのは罪なのですか

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【2011/10/15 15:58 】 | 感想ミステリ | コメント(0)
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