![]() かつて『神隠し』に逢い、一人生還した少年――空目恭一。 桜の森の満開の下で、彼が『神隠し』の少女と出逢ったとき……物語は動き始める。 禍々しいほどに美しい桜と、“枯れ草と錆の乾いたような”奇妙な香りとともに――。 今は盛りと散る花と、 風の間に間に遊びましょう。 花に乙女の夢を見て、 風の狭間に遊びましょう。 人の匂いを運び来る、風を纏うて踊るは魔物。 それは人とは触れ合えぬ、枷を纏うて歌うもの。 花の香りと戯れて、 人の香りは恋しくて、 人にあらざる悲しみを、 風の乙女と歌いましょう――
冒頭の、満開の桜の下で少女が歌う歌で、一気にひきつけられました。
文芸部の友人たちからカリスマ的に“魔王”と呼ばれる空目。その空目が『彼女』とともに姿を消したとき、武巳や稜子、亜紀、俊也らの前に、美しくも恐ろしい『異界』が扉を開く……。 空目本人が出てくるシーンというのは、実はそんなにないんです。なのに、彼がどんな人間かというのがが、目の前にいるようにわかる。それは、武巳たちの目を通して語られるから。そして、彼らそれぞれの想いや過去も。 私が一番好きなのはクールな毒舌女、亜紀なんです。彼女が“クールで毒舌”にならざるを得なかった事情、そして彼女の強さに、ものすごくひかれる。 ある種天然だけどあたたかい稜子や、“魔王陛下”を尊敬している武巳、空目の幼なじみの俊也……みなそれぞれに、『異界』に取り込まれた空目を助けようとしています。これほどの友人がいる空目は、(家庭環境のほうはともかくとしても)幸せだと思う。そんなこと恐らく意に介さないだろうところが、空目の空目らしさではあるんですが。 そして事件が終わるとき、『神隠し』の少女、あやめは――。 「正しかったと、証明された。証拠がここにあるわけだ…………なあ?」 「…………はい」 PR |
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