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【感想】リヴァイアサン
リヴァイアサン  大塚英志『リヴァイアサン』(電撃文庫)。帯には“傑作ホラー・ノベル待望の文庫化!”と書かれている。
 確かに、コレがいわゆる“ホラー”であるのは理解できる。変死体だの臓器だのといった不気味っぽいファクター満載。だが、それらは一種の味付けであって本筋は“福山さつきと三溝耕平のラブストーリー”、と私は感じた。

 舞台は、昭和のまま新世紀を迎えた東京。“終末に取り残された日本”とやらの描写を読むと、作者様、平成日本に対し言いたいことが相当あるんだな。でもストレートに言いたくないから、こんなヒネくれた舞台設定や文章にしたんだな。しかし、御本人は“ヒネくれた”つもりなんだろうが、結局ストレートに説教臭いぞ(汗)。というのが、ありありと伝わってくる。だが、それも全部味付け。私はラブストーリーとして満足したので、説教臭いのも許す。
 三年前に外国で行方不明になった耕平が帰ってきたときには、さつきは既に他の男と同棲中。本当は今でも耕平が好きなのに、彼女にすがり切った今の男を捨てることもできない。耕平が同居し始めた小生意気な幼女あかねはさつきを挑発し、そんなあかねにさつきは激しく嫉妬する。そんな生活が、今後も続いていくんだろう。でもそれが、幸せなことなんだと思える。
 何故なら(以下ネタバレ)

 東京は1999年7の月に滅んでいるのだから。自分が死んだことにも気づかぬまま、夢の中で暮らし続ける東京の住民に“終末”を告げる存在として、耕平は帰ってきた。だが耕平はそれをしなかった。東京に、さつきがいたから。彼女とともに、終末から取り残された街で夢を見続けることを選んだ。
 だから、表面上さつきと耕平が恋人に戻ることがないとしても、東京で暮らし続けるだけで二人は幸せなのだ。

 世界が終わったって君と一緒にいよう、なんてプロポーズの言葉はあっても、
 本当に世界の終わりのあとで一緒にいられる恋人同士なんてあたしたちくらいだ。


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【2004/03/05 21:00 】 | 感想電撃文庫 | コメント(0)
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