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【感想】OVER DRIVE
 向井ちはる『OVER DRIVE』(フーコー)。

 彼方からトランポリンにすべり落ち突き抜けるほどジャンプしなくちゃ

 第2回フーコー短歌賞大賞を受賞して出版された、この歌集。このところ口語短歌に関心があった私は、賞を主催した新風舎のホームページに載っていた選考委員による選評を読んだのですが。
 疾走感。スピード。ハイテンション。
 そんな表現で絶賛されていたこの『OVER DRIVE』に興味を持ち、買ってみたのです。

 薄っぺらで楽しいだけじゃ駄目なのにただ軽く軽く暴走したい

 「ただ軽く軽く暴走したい」。これには負けました。並んでいる百五十の歌には乱暴な言葉や汚い言葉も使われていますが、とにかく向井さんは“軽く”暴走しちゃうんです。その中で、不意にドキッとさせる言葉を突きつける。

 日本語は不思議と切れるナイフだから傷を受けても気づかぬ英語を

 歌集の終わりに近づくにつれて、紙の上に踊る文字までもが暴走し出す。加速。さらに加速。そのスピードで天へと突き抜けるように。空白にも似た爽快感。

 10キロで不安殺した 100キロで自意識飛んだ だからへっちゃら
 どんどんと もっとどんどん加速してぎりぎり気分のエンジンで飛べ
 いいことだ わたしはここで旅してる 思い出なんか拒否する速度で
 撃たれてもきっと痛くはないだろう 死んじゃうみたいなスピード乗れたら

 一瞬のスピードだけで笑ってる 見るべきものは何もなくなり


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【2002/03/15 23:10 】 | 感想歌集詩集 | コメント(0)
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