
上遠野浩平
『禁涙境事件 some tragedies of no-tear land』(講談社ノベルス)。帯には“仮面の戦地調停士の過去がついに明かされる――!?”と書いてある。探偵役の過去は、ミステリの売りじゃないだろ(汗)。とはいえ、私もED(エド)の過去には興味津々だったので、期待して読んだのだが……確かに子供時代のエピソードはあったが、この程度で「明かされる」なんてのは誇大広告だっ。
それはさておき。
〈事件〉シリーズの世界では魔法が一般的なのだが、殺害方法の謎解きで魔法が出てくると、どうにも納得感が薄い。事前に伏線が張ってあるとはいえ、魔法でそんなこと可能なんて解るわけないだろ、と思ってしまうのだ。
その点、本作の舞台・禁涙境は、魔法が機能しない街である。ここで起きた事件は、一見どんなに不可解でも、我々に理解できる物理法則に従っている、というのは良い。その意味で、私が好きなのは第一の事件、希望街の殺人。というか、いわゆる謎解きができる事件はコレだけだし(汗)。第ニの事件は犯罪者視点だし、第三の事件はマフィアの抗争で、第四の事件は魔物と怪人の戦闘。ミステリじゃないよなぁ(苦笑)。
謎解きに納得感があるのは1作目『殺竜事件』(
感想)。物語として面白かったのは『殺竜事件』と『海賊島事件』(
感想)だな。
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