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【感想】海賊島事件
海賊島事件  上遠野浩平『海賊島事件』(講談社ノベルス)は、魔法がごく普通に使われる世界で起きた犯罪を解明する、〈ファンタジー+ミステリ〉の第3弾。なのだが……。

 〈事件〉シリーズ1作目『殺竜事件』(感想)は、知力・魔力ともに人間には及びもつかない存在である筈の竜が、密室状況で殺された事件の謎を解くため、〈戦地調停士〉EDが“容疑者”たちを訪ねて世界中を旅して回る話。
 2作目『紫骸城事件』は、外界から切り離され孤立した紫骸城の中で、集まった魔導師たちが次々と殺されていく事件を、〈戦地調停士〉ミラル・キラルが解決する話である。ミラル・キラルの場合、解決ついでに騒動をデカくしている気もするが。


 ところで3作目、『海賊島事件』の物語の中心地は確かに海賊島であるが、犯罪が起きた現場はそこではない。落日宮と呼ばれるリゾートで、密室状況で発見された“世界一美しい死体”。その犯人と疑われる人物が海賊島に逃げ込んだために、犯人を確保したいダイキ帝国と海賊とが対立する。話の主眼は、現在進行形の一触即発の危機をいかに回避するかであって、数日前の過去に起きた事件のことなどほとんど二の次。落日宮に乗り込んだEDが全てを明らかにするものの、その真実は海賊島での事態の打開には直接の役に立たない。
 ……ミステリというのは、多かれ少なかれ、既に起きてしまった事態に関しての話なんじゃないのかなぁ。そう考えると、『海賊島事件』は〈ファンタジー+ミステリ〉と言いつつも、相当ミステリ色の薄い話に思えるのである。

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【2003/12/18 21:00 】 | 感想上遠野浩平 | コメント(0)
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