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【感想】ブラッド・ミュージック
ブラッド・ミュージック  グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』(ハヤカワ文庫SF)。ヒューゴー・ネビュラ両賞を獲得したダブル・クラウンで、“80年代の『幼年期の終り』”(感想)と評される傑作。という前評判の割には、そこまで凄くはなかったなぁというのが初読時の正直な感想である。
 しかし……何度も繰り返し読んでるうちに味が出てきたんだよねー、スルメみたいだわ(笑)。

 遺伝子工学企業の研究者ウラムは、自分の白血球から“知的細胞”を創るのに成功する。だが会社に実験を咎められた彼は、細胞を研究室外に持ち出す、自らに注射して。細胞――ヌーサイトは彼の身体を内部から造り変え、他人へ感染し、やがてそれは北米大陸全土を覆い……。
 感染した一人、バーナードの体内のヌーサイトは彼を分析し、彼の《人格》を記号化して複製し、ヌーサイトのレベルの世界《思考宇宙》に入れる。そこでは、バーナードの記憶を元に人生の再構築も可能。
 本当のバーナードが仕事では成功していても孤独なのに比べ、《思考宇宙》内の彼が歩もうとしている人生は温かい。ヌーサイトが用意した都合のいい虚構じゃないか、とは思う。だがそれでも、そのバーナードから伝わってくる幸福に、虚構を一概に否定できない。
 納得はできないんだけど妙に切ない、そんな読後感の作品である。

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【2004/08/02 21:00 】 | 感想SF | コメント(0)
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