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【感想】天になき星々の群れ
天になき星々の群れ―フリーダの世界 最近、文庫本を三冊購入した。
 一冊は、連日日記で触れている『SFの殿堂 遥かなる地平(1)』。
 二冊目は、上遠野浩平『しずるさんと偏屈な死者たち』(富士見ミステリー文庫)。
 三冊目が昨日読んだ、長谷敏司『天になき星々の群れ フリーダの世界』(角川スニーカー文庫)だ。
 この長谷敏司という作家さんは、第6回角川スニーカー大賞で金賞を受賞した『戦略拠点32098 楽園』(感想)というSFがデビュー作である。この『楽園』、私が大絶賛するいくつかの作品のうちの一つである、機会があったらぜひご一読を。
 さてさて、『フリーダ』はそういう長谷さんの二作目なので、とても期待して読み始めた。
 ――結論から言えば、「面白かったけど『楽園』ほどじゃない」。しかし、『フリーダ』は『フリーダ』で、強烈に印象に残る作品である。
(以下ネタバレもあるので、今後『フリーダ』を読む気のある方はご注意)

 主人公のフリーダは暗殺者。任務のため辺境惑星の女子高に潜入し、人を疑うことを知らないアリスという少女と同居することになる。
 街を突然襲った海賊。地下に逃げ込んだ街の住民の前で指導者が蜂起を呼びかけ、皆が盛り上がりかけたとき一人アリスは言う、「わたしは、戦わない方がいいと思います」。家族を失った友人が「あんたは間違ってる」と叫んでも、自分の《正しさ》を曲げず孤立していくアリス。ついに地下の住民から犠牲者が出たとき、彼らは投票で、《みんなの総意》でアリスの追放を決定する。「海賊とは、戦わずに話し合いででも解決できるんだろ?」せせら笑う、名もなき誰か。
 アリスの主張は確かにキレイゴトだ、そんな理想で街を海賊から救うことはできない、と私も思う。しかし、住民達の姿には“集団の威を借りた醜さ”のようなものを見せつけられるのだ。その住民達が、後には手の平を返したようにアリスを旗印に祭り上げるのだから、尚更である。彼女を守ることで自分達が《正しい》ことをしていると信じたい、そう言って。
 フリーダは言う。
「もし、あなたが本当に正しいことをしたいなら、あなたが敵だと思ったものから、正義を奪いなさい。そのために理屈をつけなさい、宣伝なさい。《悪》は、正しさを奪って、《作る》モノなの。そうやって作った悪に立ち向かえば、あなたは正しいことができる」
 《正しさ》って何だろう。テロだ戦争だで不穏な世の中、少し考えてしまう。戦わなければならない場合、というのは存在すると思っている。しかし、アリスのこの言葉も、私は否定できないのだ。
「悲しんでも、怒っても……戦うことを《正しく》してはいけないって、……わたし、思います」

 ……主人公はフリーダなのに、アリスのことばっかり書いてるな。
 ついでに言うと、一番気に入ったキャラはアリスの友人レイチェルだしな、私……。

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【2003/06/29 21:00 】 | 感想SF | コメント(0)
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