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【感想】歌集 滑走路
歌集 滑走路 娘が誕生日プレゼントを買ってくれるというので、書店で萩原慎一郎『歌集 滑走路』を選んだ。特に予備知識はなかったが、文庫になってる短歌集は珍しいので。
 目次を見て、妙に見出しが多いな? と思い、通読して理解。この歌集、五首とか七首とかの連でタイトルついてるのが多いんだ。
 ……詠む側の立場としては、長い連で統一感出すの大変なんだけど。
 読む側としては、十首かそれ以上ある長いのが好きなんだな私、と気付く。連の変わり目で気分が切れるのよね……。
 歌集の感想恒例、好きな歌を十首選んでみる。

 挫折などしたくはないが挫折することはしばしば 東京をゆく
 青空の下でミネラルウォーターの箱をひたすら積み上げている
 風景画抱えて眠るように ああ あの青空を忘れたくない
 クロールのように未来へ手を伸ばせ闇が僕らを追い越す前に
 空だって泣きたいときもあるだろう葡萄のような大粒の雨
 至福とは特に悩みのない日々のことかもしれず食後のココア
 遠くからみてもあなたとわかるのはあなたがあなたしかいないから
 サンタクロースあなたにぼくは逢いたくて逢えず大人になってしまった
 デモ隊の列途切れるな 途切れないことでやがては川になるのだ
 叩け、叩け、吾がキーボード。放り出せ、悲しみ全部。放り出せ、歌。



 十首中には一首しか入らなかったが、この歌人さん「のだ」語尾が多い。私だったら同じ語尾の歌は続けて並べないが、この方は意図的に並べてるんだろうね。
 恋愛や歌作の歌も多いのだけれど、一首ずつしか残らなかった。
 ダントツに大好きなのは、サンタクロースの歌。この歌とココアの歌を読むと、2009年に詠んだ自分の歌(下記)と、その頃の気分を思い出す。

 目の前で行ってしまったバスみたいにいろんなものを多分なくした
 バンホーテンのココアは甘い 真夜中にひとりで淹れて飲んだとしても


 あと、とある歌を読むと妙に『トビウオが飛ぶとき』のリュー北条の貸金庫の歌が脳裏を過ったんだけれど、並べて比べるとそんなに似てない(苦笑)。

 あれでない、これでもないと彷徨える言葉探しの旅だ。歌作は
 貸金庫みたいだ本は。開くたび預けてあった思い出に会う


 歌人は、本書が第一歌集で、遺歌集。2017年刊の単行本がテレビで取り上げられたり、映画化されたりしているそうだが、全く知らなかったな……。

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【2023/10/07 14:02 】 | 感想歌集詩集 | コメント(0)
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