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【感想】三好達治詩集
三好達治詩集  三好達治/著・桑原武夫/選・大槻鉄男/選『三好達治詩集』(岩波文庫)。北村薫『六の宮の姫君』(感想)中で『春の岬』という詩が引用されていたので借りてみたが、作者を知らずに詩だけ知っていた作品が、結構あるなあ。『Enfance finie』という作品中の「空には階段があるね。」というフレーズは確か、森博嗣『封印再度』に出てきたような。他にも、

 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。   『雪』

 海よ、僕らの使ふ文字では、お前の中に母がゐる。
 そして母よ、仏蘭西人の言葉では、あなたの中に海がある。   『郷愁』(部分)

 蟻が
 蝶の羽をひいて行く
 ああ
 ヨットのやうだ   『土』


 個人的には、『鴉』が気に入った。〈私〉が突然、鴉になって飛んでいく詩。

(2007.6.15追記)

 海の遠くに島が……、雨に椿の花が堕ちた。鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。

   約束はみんな壊れたね。

   海には雲が、ね、雲には地球が、映ってゐるね。

   空には階段があるね。

 今日記憶の旗が落ちて、大きな川のやうに、私は人と訣れよう。床に私の足跡が、足跡に微かな塵が……、ああ哀れな私よ。

   僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。


**********
 三好達治『測量船』収録の詩『Enfance finie』。私は『三好達治詩集』(岩波文庫)で読んだが。
 森博嗣『封印再度』に「空には階段があるね。」というフレーズが使われていたが、同じく森博嗣に、「○○は壊れたね」って本なかったか? と思い、調べたところ『φは壊れたね』だった。
 ところで『三好達治詩集』、だんだん面白くなくなってくるというか(汗)、処女詩集『測量船』が一番いいじゃん。

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【2007/06/09 21:00 】 | 感想歌集詩集 | コメント(0)
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