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【感想】731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く
731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く  青木冨貴子『731 石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』(新潮文庫)。タイトルは『731』だが、731部隊の本というよりは、部隊長・石井四郎個人の評伝の色合いが強いと思う。731部隊が具体的にどんな研究を行ったか、という面では、常石敬一『消えた細菌戦部隊 関東軍第七三一部隊』(感想)のほうが詳しかった。

 そして、個人の評伝として比較するなら、佐野眞一『阿片王 満州の夜と霧』(感想)の里見甫(はじめ)のほうが面白かったなぁ。石井四郎、確かに細菌戦部隊を設立し満州で人体実験させた人物なのだが、人間のスケールは小さい。解説で評者が、石井の人物像を〈人生が順風満帆なときは尊大であるが、そのコースから外れてしまうと、極度に小心になり、カネ勘定に敏感な男になってしまう、霞が関の中央官庁でよく見る官僚の姿〉と纏めたのに納得してしまう。
 『731』の白眉はむしろ戦後。戦犯を逃れるため隠蔽する部隊員、彼らを東京裁判で裁きたい米検察団(の一部)、戦犯免責してでも実験結果を入手したい米上層部の駆け引き。そこに、やはり実験結果を入手したいソ連の思惑も絡まる。最終的に、部隊員の免責を条件に、米国が実験結果を独占するまでの過程は圧巻だ。
 ……個人的に一番衝撃なのは、元731部隊の軍医が設立した「日本ブラッドバンク」が、後の「ミドリ十字」だってことだな(汗)。

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【2009/10/07 22:09 】 | 感想NF | コメント(0)
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