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【感想】エミリ・ブロンテ全詩集
エミリ・ブロンテ全詩集  先日、藤木直子訳『エミリ・ブロンテ全詩集』(大阪教育図書)を買ったあとで知ったが、他に中岡洋訳『エミリ・ジェイン・ブロンテ全詩集』(国文社)というのも出ている。
 国文社版の「番外 詩連(しばしば叱られても いつも戻ってくるのは)」という詩、詩連という言葉は大阪教育図書版でのスタンザらしいが、該当する詩が載っていない気がする。あと、国文社版にはゴンダル物語の粗筋が載っているらしい。
 その番外の詩は、ネットで見つけたので、メモっておく。


(中岡洋訳)
 しばしば叱られても いつも戻ってくるのは
  わたしといっしょに生まれた あの最初の感情だった
 そして 富と学問の せわしい追究を止めて
  あり得ぬことどもの あてなき夢を求める

 今日 わたしは おぼろな境を 探しはすまい
  その支えきれない広漠さが わびしいものになってゆく
 まぼろしが たち現れて 次々と群れをなし
  非現実の世界を あまりにも不思議に 近づける

 わたしは歩いて行こう だが昔の英雄たちの足跡をではなく
  気高い道徳の 道でもない
 また あまり高名でもない顔の間
  遠い昔の 雲にかすんだ 歴史の姿の間でもない

 わたしは歩いて行こう わたし自身の性質が導き行くところ
  それとは別の案内者を選ぶのは わたしには面倒だ
 羊歯茂る谷間の 灰色の羊の群れが草を食むところを
  荒々しい風が 山腹に吹きつけるところを 歩いて行こう

 そのさびしい山々には 啓示に値するどんなものが あるのだろう
  わたしには告げることができないほど 大きな栄光と 大きな悲しみがある
 ひとりの人間のこころを 目覚めさせ 感動させる大地は
  天国と地獄の世界を ふたつながら 中心に置くことができるのだ

 もう一つ、ネットで見つけたエミリの詩の部分。

(中岡洋訳)
 荒野へ 荒野へ そこには 足もとに
 短い草が ビロードのように 生えていた!
 荒野へ 荒野へ そこには 丘の道が
 晴れ渡った空に 日差しを浴びて 登っていた!

 荒野へ そこには 紅ひわが
 古びた御影石のうえで 歌をさえずっていた
 雲雀が――野の揚げ雲雀が
 みんなの胸を自分のと同じ喜びで 満たしていた

 いかなることばが そのとき起こった感情を
 伝え得よう はるかに遠く追放されて
 さびしい丘の端に 跪き
 そこの生える褐色のヒースを 見たとき

 これは、大阪教育図書の91番「スタンザ」の途中部分に相当する。

(藤木直子訳)
 荒野へ、荒野へ、そこには短い草が
 ビロードのように足元に短い草が生えていた!
 荒野へ、荒野へ、そこには丘の道が
 澄みきった空に太陽を浴びて高く登っていた!

 荒野へ、そこでは紅ひわが
 古びた御影石の上で声を震わせて歌を歌っていた。
 そこでは、雲雀が――野生の雲雀が声を震わせて
 自分の胸とおなじように、みんな胸を喜びで満たしていた。

 その時起こった気持ちをどんな言葉が
 伝えるであろうか。はるか遠くに追放され、
 寂しい丘の端にひざまずき、
 褐色のヒースがそこに生えているのを私が見た時。

 個人的には、中岡洋訳のほうが好みなんだよなぁ。だからといって、5775円する国文社版を買うかというと、ちょっとためらう……。

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【2013/07/31 21:05 】 | 感想歌集詩集 | コメント(0)
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