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【感想】夢違
夢違 恩田陸『夢違』(角川文庫)。タイトル、何の疑いもなく「ゆめたがえ」と思っていて、読了後に奥付で「ゆめちがい」だと気付く(汗)。
 著者の作品は、『光の帝国 常野物語』『六番目の小夜子』『木曜組曲』『ユージニア』『Q&A』を既読。で、読んでいる最中は謎に引っ張られて面白いが、全ての疑問が解明されてスカッとする『木曜組曲』(感想)は寧ろ異質で、謎が残って読後モヤモヤするのが平常運転なのだと学習した。謎の残り具合が私の好みと合えば「面白かった!」となるし(『ユージニア』感想感想)、合わなければ「納得できん!」となる(『Q&A』)、博打のような作家である。
 とにかく、全面解決は期待するな、という心構えで読む(笑)。

 夢を映像記録(=“夢札を引く”)して精神医療に用いる近未来。「夢判断」を職業とする野田浩章に、集団パニックを起こした小学生達の悪夢を分析する仕事が持ち込まれる。
 同じ頃、浩章の兄の元婚約者であり、十数年前に死んだ筈の古藤結衣子の『幽霊』が、周囲に見え隠れし始める。彼女は、日本で初めて“予知夢を見る”と公的に認められた人物だった。



 細かい疑問は多々あるが、本書の大きな謎は、次の二つ。
 (1) 現在の、小学生集団パニック事件の真相。ここ一年、全国の小学校でパニック発生。パニック鎮静後の子供たちは、何が起きたのか全く覚えていないが、悪夢に魘される。しかし、起きると夢の内容も忘れている。彼らは何を見たのか。
 (2) 十数年前の、結衣子の死の真相。結衣子は、爆発事故の犠牲者となった、とされている。爆発直前に防犯カメラに映っており、以降消息不明のため、激しく燃焼して身元確認できない遺体の一人だ、と推測された。だが本当に死んだのか。

 以下ネタバレ注意。
 (1)の解。過去に夢札を引いた経験がある子供がいるクラスで、パニックは発生した。幼少期に夢札を引くことで集団的無意識と接触し易くなり、その子を通して、夢から現実に集団的無意識が染み出した。
 (2)の解。結衣子は、爆発から未来へタイムスリップして生存したため、事故以降消息不明になっていた。但し、浩章が見た『幽霊』は結衣子の生きた肉体ではなく、集団的無意識から現実に出没したもの。
 『ユージニア』や『Q&A』で起きた事件は現実の枠組みを超えないので、読む私にも「常識的な説明で解決できる筈」という先入観がある。にも拘らず、『Q&A』は非現実な方向で終わったため、納得できなかった。しかし、本書は予知夢だの幽霊だの、前提がそもそもオカルト的なので、どんな解を示されても私の許容範囲が割と広い。従って、これで納得した。

 最後まで残った謎。浩章と協力して捜査する岩清水、さんざん思わせぶりな態度を取っておいて、結局、何だったんだ(汗)。絶対、個人的に拘る動機があって、この事件を追っているんだと思ったのに。結果的に“兄”が絡んでいたが、浩章から“岩清水に似た男”の話を聞く前から捜査しているしなー。でもまぁ本筋に関係ないので、謎のままでも可とする。
 ……それはそれとして浩章、奥さんいるのに、最後それでいいのかよ。とは思う。

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【2014/09/08 01:34 】 | 感想SF | コメント(0)
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